199日目「魂が震える作品を書きたいわね。」

「魂が震える作品を書きたいわね。」


部屋に入るなり、すでに僕らのベッドの上に転がっていた紗奈に引きづり込まれ、ベッドの上に。

もはや、部屋も僕らの部屋と言い変えた方が良いのだろうか?

しがみ付いてなかなか離してくれない紗奈が唐突にそう言った。


「えーっと、もしかして昨日の話の続き?」

「そう。

結局、それに尽きるのよ。

前に言ってたカ◯ヨ◯コンの話もそうだけど、他の作品どうこうではなく、自分が心の底から求めている作品に出逢いたい。

それだけなのよね。

だからテンプレだとかどうとかは私にとってはどちらでも良いことなのよ。」


紗奈を引き剥がしつつ、逆に軽く抱きしめてあげると大人しくなった。


なるほど、なるほど。

僕が頷くと紗奈はさらに続ける。


「、、、結局のところ読みたい話かどうかはランキングに依らないから、読みたい話を探すには自分で見つけていくしかない。

だから、魂が震える作品を見つけたら本当に幸せね。」

「うんうん、そうだね。

、、、そう簡単にはないだろうけど。」


紗奈はグリグリと顔を押しつけて、僕に甘えてくる。


「、、、そうなのよね。そこが問題なのよ。

テンプレは完全に飽きちゃったから、ランキング上位に魂が震える作品はほぼ見当たらないし、大体、ランキングで言えば60〜100に時々入るような作品に私的当たりが存在するわ。

多数派ではないのだろうから、なかなか。」


確かに話題性と作品が琴線に触れるかどうかは関係がない。

そこを迷ってランキング内を見てしまうのは、、、まあ、人のサガというものなのだろう。


「成績とかでもそうだけど、小さい頃からランキングで順番付けをつける習慣がどうしてもあるでしょ?

どうしても目がいくし、作品の良し悪しとは関係なくても、評価を受けているとほんと単純に嬉しいし、受けていないと『思ってしまう』と単純に寂しいし、、、人ってままならないわぁー。」


紗奈の頭を撫でる。

「まあ、そうだね。

そうとは言え、なんでもかんでも人が周りを気にせず強くあれる訳でもない。

僕なんかはほどほどに折り合いをつけるな。

紗奈のこと以外。

紗奈だけは譲らないよ?」


そう言って紗奈の口を奪う。

紗奈も当然のように抵抗せずに舌ごと受け入れる。


もきゅもきゅ。


互いの目を見ながら口を離す。


「、、、なるほど。私はすでにフェルマーの最終定理を解いていたというやつね。」

「フェルマーって数学の難問の?

つまり欲しいものはすでに手に入ってたってことかな?」

紗奈は力強く頷く。


フェルマーの最終定理は確か論文で解いたという人が居たけど、どう解いたかは実証されてなかったとか言う話があって、解いたと宣言することでその難問を解いたという立場に立ち、、、。


訳分からないと思うが、大丈夫、僕もわからない。

フェルマーどうこう関係なく、紗奈が何を言いたいかを分かったのは、僕が紗奈の定理の専門家だからだ。


「あー、つまり、、、。

まあいいや。

とりあえず、紗奈にもきゅもきゅするね?」

「颯太、、、今更かもしれないけれど、改めて宣言されると、とっても恥ずかしいんだけど、、、良いけど。」


許可が出たので紗奈の頬に手を当て、口を開けて紗奈の口に重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。

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