109日目「そうだ、耳だ。」

「そうだ、耳だ。」


夕飯後、紗奈とリビングのソファーに並んで座ってテレビを見ている時に、紗奈は唐突にそう言った。


「何が?」

「ほら、イチャイチャよ。」


両親はリビングから席を外しているので、聞こえはしていないだろうが。


「それで、何がイチャイチャ?」

「耳を舐めるのって、付き合ってない幼馴染でもするでしょ?」

「しないと思うよ?」


紗奈は驚愕の表情。


「だってネット小説で見たもの!」

「それもうカップル一歩手前の幼馴染同士じゃないの?」

「そういえば、そうだったわ。」


それで会話は終わり、僕はテレビを見る。

、、、横から紗奈の視線を感じながら。


「ダメだからね?」

「ちょっと、ちょっとだけ、先っちょだけ。」

「どちらかと言えば、男のセリフだよね?それ。」

うずうずと期待した目で紗奈はにじり寄る。


「、、、いつ父さんたちが顔を出すか分からないから、ダメだよ。」

「リビングじゃなかったら、良いってこと?」


ングッと言葉に詰まる。

今の言い方だとそうなってしまう。

「、、、くすぐったいから、ダメ。」

「でも舐めたい。」


紗奈はストレートに言ってきた。

ちょっとぐらいなら、我慢すべきかと思ってしまった。


いやいや。


「じゃあ、リビングでもきゅもきゅしたら、舐めても、ングッと。」


もきゅもきゅ。


さっと目線を部屋の入り口に。

、、、大丈夫。

「じゃ、部屋行こ!」


そう言いながら、紗奈の手を引かれ立ち上がる。


なんというか、すっかり初日からなので、慣れさせられてしまったが、夜に若い男女がお部屋に毎日2人っきりってどうなんだ?


、、、と思ったけど、本当に今更なので、頭の隅に追いやった。


階段を登り切って、部屋の前。

「あ、そうだ、紗奈。」

「何?、んっ。」


もきゅもきゅ、、、。

耳への攻撃が回避できるまで、ずっと階段でもきゅもきゅさせて頂いた。


そして、毎度のことながら思った。

僕ら色ボケ過ぎ、、、。

それも結局は頭の隅に追いやった。

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