1年と176日目「寝たい!」

「寝たい!」


ベッドの上でスマホ片手に紗奈は唐突にそう言った。

今日はもうノルマも終わり、すでに紗奈の隣で僕もスマホを見ていた。


とりあえず僕はスマホを置いて、紗奈の口に自分の口を少しだけ重ねる。

もきゅもきゅ。


口を離すと紗奈は満足気に頷く。

「はぅー、颯太とのもきゅもきゅはなんでこんなに美味しいのかしら〜」


美味しい、美味しい、言い得て妙な言い方だけど、言われてみればそんな感じだ。

優しく紗奈の頭を撫でつつ。

「ところで紗奈。眠いなら寝ないと」


もういい時間だ。

むしろ寝なければいけない。


「書くー、書くのよー、書かないとストックがーストックがー!」


紗奈はパンツァーというプロットがいらないタイプらしいけど、意外とストックを貯めたがる。


まあ、何事も余裕が大事だけど。


「難しい展開になるから、最近は前のように5000とか1万字とか書けなくなってるのよ……。

せいぜい1000文字」

ぐたぁーと紗奈がのびる。


1話あたり2000文字前後にしてるらしいから、更新スピードは精々2日に1話のはず。


「毎日更新してるね?」

「自分を追い詰めてるの。

夏休みの宿題を最後に残してそれを短期間で行うことで、凄まじい集中力を人は身に付けられるらしいわ」


そうなんだ……、でも余裕を持って生きようね?


紗奈の頭を撫でてから、紗奈の唇に軽くキスをして添い寝する。


そこから紗奈をポンポンとあやす。

「いやぁ〜、寝かしつけられる〜」

「うんうん、いいから寝なさい」

また軽く触れる程度のキスをする。


そこからポンポンとまたあやす。


「……一回だけもきゅもきゅ〜」

紗奈がトロンとした目でそう言う。

眠い時の目だ。

可愛くて狼颯太になりそうな気持ちをグッと堪え、口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


「……おやすみー」

「おやすみ」


すぐに静かな寝息。

僕はそれを見て思わず笑みを浮かべ、優しく髪に触れておいた。

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