43日目「やってしまった、、、。」
「やってしまった、、、。」
今日は紗奈が部屋に居ない。
僕らは昨日、初めて喧嘩をした。
すぐ仲直りをしたけれど、僕はそれについて今日も深く反省し、勉強も手に付かず頭を抱えていた。
はっきり言うけれど、紗奈は可愛い。
かなり可愛い。
凄く可愛い。
どれだけ可愛いかを表現するのは難しいけれど、トニカクカワイイというぐらい可愛い。
それが幼馴染で妹だ。
もう猫可愛がりだ。
そんな訳で大体のことは、今まで僕から折れていた。
それもそのはず。
言ってしまうが、僕には自信がない。
紗奈はこんな僕のことを好きだと言ってくれるが、僕は僕自身を誰かに好きになってもらえるほど、出来た人間とは思えない。
だから、毎日欠かさず勉強をする。
勉強だけは多少の才能の差ぐらいは頑張れば追いつくからだ。
運動という面も鍛えれば、それなりには強くなっていくだろう。
ただ、そこには大きく才能という壁が乗って来る。
今回、僕が紗奈と喧嘩したのは他でもない。
そのコンプレックス故だ。
紗奈が本気で勉強すると、僕は敵わない。
お前は、努力したところで駄目なのだ。
そう突きつけられた気がしたのだ。
無論、それは僕のコンプレックスに過ぎないし、そのことを紗奈に伝えたことはない。
、、、情けないからだ。
それが今回の喧嘩の原因。
強くなれない心のせいだと、僕には自覚がある。
それと同時に、こんな自分に紗奈は勿体ないのだとそんな気持ちすら心の奥に燻っていた。
それが爆発した。
ふー、とため息を吐き、身体を起こす。
、、、もしも、紗奈が。
もしも紗奈がこんな僕に対して、こんな情けない僕に対して、別れを選ぶのであれば、償いをしようと思う。
昨日は途中で、考えるのを辞めてしまったけれど、その時が来ることがあるというなら。
乱れていた心は静かになっていく。
こうやって、人は大切なモノを失うのだろうか?
こうやって人は、別れていくのだろうか?
心にケジメをつけて。
それは全て、人が前に進むために。
誰かをまた愛せるように。
もしくは、、、人と向き合うために。
もう一度、ため息と微笑みを同時に。
ふと後ろを振り向く。
いつもの僕のベッドに紗奈は居ない。
それでも。
それが日常になっても。
扉の隙間から、紗奈が覗いていようと、、、!?
がたがたと椅子から、落ちてしまう。
「ふうたがぁ〜。ふうたが、私を捨てようとする〜。」
ぼろぼろと涙をこぼす紗奈。
「してない、してない。」
僕は首を横にぶるぶる振る。
扉の隙間から、泣きながらジーッと見つめる紗奈。
ホラー?
「紗奈?、、、こっち来る?」
椅子から転けて、座り込んだままだけど、手を伸ばしてみる。
紗奈はバタンと扉を開けて、びゅっと勢いよく飛び込んで来つつ、後ろ手でバタンと扉を締める。
ガシッと、僕の首に手を回し、全身でしがみ付く。
うぐうぐと泣きながら僕にしがみ付きながら、離すまいとする。
ヨシヨシと頭を撫でる。
「やだ。捨てちゃやだ。」
「捨てない捨てない。捨てられることはあっても捨てることはないよ。」
「やだ!捨てることもやだ!」
「そうかそうか。」
なでなでする。
「紗奈は可愛くて、運動も出来て、頭も良いから、、、。僕で無くてもッツ!」
勢いよく押し倒される。
決意を秘めたような、というか目が据わった紗奈。
がっと顔を寄せ、口の中を蹂躙。
「、、、覚悟が出来る様に、子供作る。」
「ま、待て、紗奈、落ち着け。」
「待たない。待って颯太に逃げられるぐらいなら、一切待たない。」
首筋に噛み付くように、紗奈は舌を這わせる。
「違っ、待って、分かった、分かったから!」
据わったままの目だが、紗奈は僕の顔を見て動きを止める。
互いの荒い息の音だけが響く。
「、、、分かったから。僕も紗奈を捨てることは無いし、紗奈も、、、僕を捨てたり、しない。」
「ほんとに分かった?」
「分かった。」
「分かってなかったら、今すぐ子供作ろ?」
小首を傾げながら、可愛くそう言った。
可愛いけど、目は据わってる。
「分かってるから、子作りは、今後、ね?」
「、、、うん。」
安心したのか、普通の目に戻り、また僕にしがみ付く。
僕は紗奈の髪に触れながら、紗奈に僕のコンプレックスについて、告げる。
それを聞いて、紗奈は不思議そうに首を捻る。
「颯太が自信が無いのは分かった。どうしたら良い?」
「どうしたらって、、、。」
改めて僕の中にその答えは、一つしかなかった。
「自信が付くまで、実力が付くまで、続けるしか、無いかなぁ。」
「うん。納得が言ったら言って?
ずっと待ってるから。」
また紗奈はしがみ付く。
しがみ付きながら、紗奈は続ける。
「、、、待ってるけど、我慢出来なくなったら襲わせて?」
襲われるんだ?
「、、、うん。
待たせてごめんね。」
僕もまた優しく紗奈の頭を撫でた。
僕らは互いが落ち着くまで、それを続けた。
、、、気づいたら、朝だった。
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