42日目「喧嘩中、、、。」

「喧嘩中、、、。」


喧嘩中にも関らず、僕の部屋に来て僕のベッドの上で、座って僕の枕を抱えてスマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう呟いた。


僕は反応せず、数学の問題を解いていく。

考え事をしないようにするには、勉強をするのが1番。


無感情にただ問題を解く。


きっかけは本当に些細な事、何で言い合いになったかも覚えていない。


ただ、紗奈が最後に僕に放った言葉は、紗奈であっても許せなかった。


『何よ!ずっと勉強してても成果が出ない癖に!』


事実ではないことを言われイラッと来ることもあれば、事実を突かれてイラッとくることもある。


今回は後者だった。


僕が何のために、毎日勉強していると思って、、、!


その言葉はすんでのところで、飲み込んだ。


それは僕が勝手に、思ってやっていることだ。

紗奈にそれを言ったところで。

そう思った。


そこからは紗奈を無視した。

何かを言おうとすると、同じような罵詈雑言を口から出してしまいそうだったから。


嫉妬も無くはなかった。

得意分野の差はあれど、紗奈の成績は僕よりも良い。

コツを掴むのが上手いのだろう。


それは何も勉強に限った話ではない。

高校生になって、紗奈は急激に綺麗になった。


女性の成長は男よりも早い。

そういうこともあるだろうが、それだけでは無く、素材の違いは大きかった。


さらに明るく、運動神経も良い。


頭の回転が早い事は全てに繋がる。


今はこうして、同じ部屋に居ることが出来るが、きっと、互いの親が再婚しなかったら、その道は別々に別れてしまっていたかもしれない。


それが普通の幼馴染だ。


それを覆せるほどの自信は僕には、無かった。

どれほど努力しても、鍛えて見ても、何か壁にぶつかる感覚。


どうやったら、紗奈の隣に並ぶことが出来るのか。

それが分からなかった。


だから、喧嘩なんて出来なかった。

劣等感に塗れて、どんな言葉を僕が言えよう?


紗奈は可愛い。

幼馴染や家族の欲目関係なく、間違いなく可愛く性格も良い。

頭も良く、運動も出来る。


きっと僕より良い男は、必ず捕まえることが出来るだろう。


ネット小説に出て来る、悪い男ばかりではないのだ。


シャープペンは動かない。

あるいは、この僕の存在こそが、彼女の幸せを邪魔しているのだろう。


僕の感情が脆弱なばかりに、彼女の大切なものを奪ってしまった。


それは彼女が、これから出会う大切な人との関係に、シコリになってしまうかもしれない。


その時は、、、償わなければならない。

彼女の良いところを丁寧に、その相手に伝えて、彼女の良さをより理解してもらおう。


そう、思う。


ぽたり。


情けな、、、。


この感情の乱れだけはなんとかならないものか。


紗奈と喧嘩するのをのは、この情けない自分を認めたくないからに他ならない。


だから、いつも勉強しながら、心を落ち着かせて話を聞くようにしていた。


「颯太〜、、、。」


振り向くと、紗奈はスマホを置いて両目から溢れる涙を流して、こちらを見ていた。


僕はため息を一つ。


立ち上がり、ベッドの紗奈を優しく抱き締める。


「ごめんね。紗奈。少しイライラしてたみたいだ。」


ここで僕が、こうして紗奈を腕の中で引き留める事は彼女のを思えば、悪い事なのだろう。


だから、ごめんね、逃してあげれなくて。


紗奈は僕の腕の中で、首を横に振る。


「颯太〜。ごめんなさい、、、。だから、捨てないで、、、。」

なんで、僕が捨てることになるのか、さっぱりだ。


「そんな事は無いよ。」

紗奈の涙を止めたくて、頬や目の下にキスをするが、紗奈の涙は止まらない。


なんとか、涙を止めたくて、唇を深く重ねる。

少しだけ、涙が収まったように見えて、さらに重ねて、舌を絡ませる。


紗奈からも応えるように、一生懸命舌を動かして来る。


ゆっくりベッドに押し倒す。

正しいのか間違っているのか、今の僕には分からないまま、感情のまま、愛の言葉を告げる。

「愛してるよ。」


返事を待たずに口を重ね、また舌を絡ませる。


「私も、、、。」


僕らはただ荒れ狂う感情のままに、何度も重なった。

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