1年と162日目「そろそろ潮時なんでしょうね」

「そろそろ潮時なんでしょうね」


僕は勉強をしながら机に置いてあった目覚まし時計を見る。

いつもより時間は少し早い。


「何が?」

顔だけ振り向くと紗奈はスマホを寝転んでのぞいていた。


「カクヨムのカクの方」

「そうなんだ?」


どういう流れでそうなったのかはよく分からない。


「前々から思ってたのよ。

私はなんの目的で書いてるのかって」

「言ってたね。

自分の読みたいものを書くためじゃなかった?」


「それもあるわ。

イチャイチャ幼馴染以外は書籍化されたら嬉しいなとも思うし、PVとか星を貰えるとそれだけでテンションは爆上がりよ」


イチャイチャ幼馴染はダメなんだ……。

まあ、僕らのもきゅもきゅが世に拡散されても困るからね。

カクヨムですでにオープンにされてるけど、まだ少な……。


「そう言えば紗奈。

イチャイチャ幼馴染も少ないと言いつつPV80ほどいくよ?

つまり80人前後がまだ読んでくれているということで……多いよね?」


「しゃらーっぷ!

しゃらーっぷよ、颯太ぁああ!!」


紗奈は立ち上がり、そう言いながら僕の椅子のところまでやって来て上から口を塞ぐ。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


キュポンっと音をさせながら口を離す。


「まあ、アレよ。

今、ユーチュブとか人気でしょ?

周りでもやっていたりする人、多いらしいのよね。

その人たちが言ってたの。

再生回数40k超えてて凄すぎる、って……」


つまり4万だ。

それだけ見た人が多いと言うことだ。

カクヨムの基準で言うならPVだろうか?


「……紗奈、イチャイチャ幼馴染。

29万PV超えたね」


紗奈は目を逸らす。

「さささ、作品の数が違うからよ?」


まあ、それはそうかもしれないが……。

見られた数的に、すでに手遅れじゃないか?


僕はあえてその言葉を口にせずに飲み込むのだった。

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