370日目「もきゅもきゅしたいわ」

「もきゅもきゅしたいわ」

「してたよね? というか今してるよね?」


僕らのベットの上で紗奈は寝転がったまま、両腕を僕の首の後ろに回して、ついさっきまでではなく、現在進行形で口を重ねているところで唐突にそう言った。


「今日は何もしたくないって日あるよね?」

「あるけど、急に話を変えたね?」


吐息が掛かる程度……というよりも、望むなら今すぐ唇が重なる程度にしか離れずに話をしている。

唇が時々擦れ刺激になる。


紗奈はその状態で少し口を開け、僕の目を見る。


何を求めているかはもちろん、すぐに分かる。

迷わず口を重ねた。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。






それからしばらくして……。


「あー、今日はもう何もしない! しないったらしない!」

存分にイチャイチャした後で、紗奈は枕に顔を埋めてそう宣言する。


その頭を撫でてあげる。

「もう夜だけどね」

「サザエさん症候群になる前に、最近サザエさんを見ていないわ」


それはまあ、仕方ない。

カクヨムばっかり見てるし。


紗奈はコロンと仰向けになり、ちょいちょいと僕の服の袖を掴んで催促する。


それに応え上から紗奈の口に口を重ねた。

もきゅもきゅ。


満足したのか、紗奈はスマホを取り出しカクヨムを見始める。

「今日は色々と愛のある作品を探した1日だったわ」

「良いのは見つかった?」


「そうね、慎重に慎重を重ねてみたわ。

まず寝取り浮気ハーレムがある作品は除外。

そこに愛は無いわ。


……最初はカクヨムコンランキングから探したけど、ダメね。

ランキング上位はやっぱり流行り物が占める風潮はまるで変わらないわね。


ピックアップの星少数の作品の方が私的ヒットが多いわ」


「紗奈の好みもあるだろうけど、ランキングシステムそのものの体質が変化している訳ではないから、紗奈が読みたい作品はなかなか浮いてこないよね」


「そこが今回のカクヨムコンの危険なところね。

まあ、流行り物こそがカクヨムが推したい作品なのだとしたら、作戦通りだけど読者としては残念ね。

ハーレム無双チートなんて私は永遠に買うことはないのだけど……」


「まあ、今回がどうなるかは分からないけどね。

僕は紗奈ほどカクヨムをスコッパーしてないけど、たしかに面白いと思える作品がもっと表に出て来てほしいね」


そこで何かを決意したように紗奈はスマホを置いて僕を呼ぶ。

「颯太!」

「なんだい?」


「もきゅもきゅ!」

両手を伸ばし要求。


つまりいつも通り。


「はいはい」

「はい、は一回! んっく」


顔を近付けると紗奈は僕の首の後ろに腕を回し、逃すまいとしがみ付く。

舌を互いにゆっくり絡ませてから口を重ねる。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。

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