1年と135日目「人はどうして悩み惑うのかしら?」
「人はどうして悩み惑うのかしら?」
紗奈が僕らのベッドの上で立ち上がり、寸劇のように天井に手を伸ばし斜め上を見つめる。
僕はいつものように机の上を片付けて、椅子を回転させて尋ねる。
「今日はどうした?」
尋ねると紗奈はベッドの座り込み、バフバフとベッドを叩く。
「気になるのよ!」
「何が?」
「ランキングとか、星とか!」
僕は思わず黙り天井を見上げる。
「……そういうのやっぱり気になるんだね」
紗奈はもう一度バフバフとベッドを叩く。
今度は隣に来いという合図のようだ。
叩き方が何か違うのだ。
何かは分からないけれど。
紗奈の隣に座ると、間髪入れずに口を奪われた。
もきゅもきゅ。
それから口を離すと、僕の腰にしがみ付きゴロゴロと擦り寄る。
「この半年、公爵様の話と追い越せ追い越されで、ほとんど同じペースで星を付けていた他の人の作品が終わったのよ」
「一昨日言ってた作品?」
「そう一昨日言ってた作品。
その作者が終わらせた気持ちがよく分かるのよ。
公爵様のお話も私にしては皆のおかげで過分な評価を貰っているけど、それでもそれ自体に書籍化の可能性ってほとんどないと思うのよね」
可能性が無いと言い切るのではなくほとんど。
これはカクヨムより他のネット小説サイトの方が強烈だろうけど、書籍化される作品は言ってみれば『分かりやすい』作品が多い。
その点、カクヨムはかなり編集が頑張っているようにも思う。
「……同じ気持ちになるだけに、いわゆる『そういう話』を書いた方が良いのかと悩むのよねぇ〜」
「いや、無理でしょ?
寝取りも浮気もハーレムも、理由のない転生も理由のないチートも、全部紗奈は試そうとして失敗してるよね?」
紗奈はバフバフとベッドを叩く。
「何を言うの、颯太!
私は寝取りも浮気も試したことはないわよ!
それだけは虫唾が走るレベルで無理なのよ!
試したのはハーレムとザマァとチートと転生とついでに勇者と……あ、そう言えば寝取り試したわね。
見事に純愛(?)になったけど」
「つまり書けないんだから、考えても仕方がないよね?
そもそも紗奈って書籍化目標だっけ?」
それっぽくないよね?
「書籍化されることになればとっても嬉しいけれど、どちらかと言えばリワードメインね。
だから!
日々の応援がとっても嬉しいの!
ありがとう!皆!!」
紗奈はまたベッドの上に立ち上がり、両手を広げ感謝の声を上げる。
珍しい感じにテンション高いね。
「お陰様で公爵様の話も星3000を超え、もうすぐ200万PV!
更に更に詐欺師の話なんて星1000を超えながら、平均評価2.9!!
これはあの人とかあの人とかあの人とか、見るからに文章も内容も面白い作品を書いている人ぐらいしかいないほどの快挙!!
超嬉しい!」
紗奈は更に天井に向け感謝の祈りを捧げる。
「うんうん、有り難いことだね」
何より紗奈が嬉しそうでよかった。
そこで僕は首を傾げる。
「じゃあ、悩む必要なくない?」
紗奈はスッと僕の隣に座り込む。
目も座っている。
「だから言ったでしょ?
人はどうして悩み惑うのかしらって。
理由はないけど、隣の芝生は青く見えるものなのよ」
そだね……。
僕がなんとも言えずに苦笑いを浮かべると紗奈は誤魔化すように……誤魔化そうと僕を押し倒して、そのまま口を重ねて舌を重ねてきた。
もっきゅもっきゅウチューもっちゅもっちゅう……
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