195日目「期待が!期待が怖い!」
「期待が!期待が怖い!」
先程まで僕らのベッドでスマホでネット小説を書いていた紗奈は、タオルケットを被り唐突にそう言った。
あ、そろそろ時間かぁ。
僕は時間を確認して机に上を片付ける。
それから椅子から立ち上がり、紗奈頭巾となった紗奈の背中をぽんぽんと叩く。
「どうしたの?」
紗奈はバサっとタオルケットから出て来て、僕にスマホを突き付ける。
それを僕が受け取ると、ガシッと腰にしがみ付いた。
見ろということらしい。
「良かったね、レビュー書いてもらってるじゃないか。」
「コワイ!」
え?何が?
「期待がコワイ!
詐欺している訳じゃないけど、これからここがああなってそうなって、こうなっちゃうの!」
「あー、なるほど。
たしかにこれを主張すると、その展開は人によっては、『え!?』となってしまうかもしれないね。」
ネタバレ部分について、悩むのは書き手の宿命かもしれないね。
「そうなのよ、伏線は敷いてたつもりだけど、感じ方は人それぞれだから。」
「でも大事な、、、避けられないシーンなんでしょ?」
「そうなのよ。物語を構築する上で、むしろここから本番と言っていいぐらいに重要。」
「じゃあ、仕方なくない?」
僕は書き手ではないから、そうとしか言えない。
「だからコワイ!
違うじゃん!と言われそうで。
良い評価くれてると特に!
私の豆腐メンタルが疼くわ!」
「紗奈って豆腐メンタルだっけ?」
紗奈は僕の腰にしがみついたまま首を傾げる。
「違う?」
「違うんじゃない?」
紗奈は落ち着いたらしく座り直す。
「実際、人にもよると思うのよね。
私は鬱展開もホラーも嫌いだけど、物語の構成上無視出来ない時は突き進むわ。
全てはハッピーエンドのために。
ただ人によっては方針を変える人もいるみたいね。」
「あー、勢いで書いちゃう人のパターン?
噂だけは聞くね?
本人がエンディング後に実は途中までしか考えてなかったと宣言した話を見たことあるね。
ランキング上位で。」
「、、、人それぞれではあると思うのよ、実際。
ただ私がコワイと思うだけで、気にしない人は気にしないよね。」
う〜んと僕も少し考える。
「この間の話と同じじゃないかな?」
「この間?」
「何故書くのかという話。
書きたい話があって書くのかどうかってこと。
だったら、余程筋が通らなかったり、おかしな話なのはダメだけど、物語上避けて通れず、むしろ求める未来のためならやっぱり仕方ないんじゃない?
それでこそ物語の登場人物たちも輝く訳だから。」
「、、、そっか、そうよね。」
紗奈は何度も頷く。
そして、、、。
「ふうたぁああ!!」
「うわぁ!っんむ!?」
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもっきゅもっきゅぴちゃもっきゅ、、、。
「ぷはぁ!私書く!迷いながらだけど、書くわ!見てて颯太!」
「、、、う、うん。
出来れば飛びついて襲って来ずに、普通にもきゅもきゅしてくれると嬉しいかな。」
「オッケー!!」
そう言って、紗奈はまた僕に飛びつき口を奪った。
もっきゅもっきゅもっきゅぺろもっきゅもっきゅもっきゅ、、、。
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