9日目「血の繋がった妹だけど、お兄ちゃんと恋愛してもいいよね!」

「血の繋がった妹だけど、お兄ちゃんと恋愛してもいいよね!」

「え?ダメでしょ?」


僕はノータイムで答えてしまった。


僕のベッドの上で布団に丸まりながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


良いんだけど、最近、毎日紗奈が僕の布団に包まったり、枕を抱えたりするから、寝る時に紗奈の匂いが染み付いて落ち着かない。


口に出すと変態ぽいから言わないけれど。


「なんでよー。妹と結婚しても良いじゃないのー。」


「恋愛じゃなかったの?結婚は更に駄目でしょ。昨日から結婚ネタ多いね。

残念ながら、世界全体で見ても同性婚に対する理解は深まり出しているけど、近親婚に関しては、ほぼ、、、僕が知る限り認められていない。


これは何も恋愛を規制する意味ではなく、生物としての在り方の問題なので、かつて、血の尊さを求められ、王族同士の近親婚を繰り返した結果、障害を持つ子や極端に寿命が短くなる傾向が出て来ていた。


これは遺伝子の中で父と母からそれぞれ半分ずつ遺伝子を受け取り結合し生物の身体が作られるわけだが、例えるなら+と−の遺伝子があるうちで−同士が結合してしまうと、子に障害が発生したりする。


近親婚同士では、多数ある遺伝子の中で−同士がくっついてしまいやすい遺伝子配列を共有している可能性が高く、その結果、近親婚を繰り返すと人の社会そのものが成り立たなくなる。


故に、僕が知る限りだが、特に近代以降遺伝子工学が発展した結果、近親婚が規制された訳だ。


ただ、こと日本においては、兄妹同士が結婚届けを提出して受理されても罰則はない。ないが、法的に合法と言うわけではない。故にどうしても近親婚がしたい場合は、届出なく、事実婚であることが妥当と思われる。


無論、社会通念上、難しいと言わざるを得ない訳ではあるが。

なお、たまに誤解されることもあるが、三親等つまり従兄弟同士結婚可能だ。当然、義理の関係も血の問題がないので、合法である。

なお、血縁を確認するのは戸籍謄本を見ると良いと言われているが今ではDNA鑑定という手もあると言う。


でも小説では兄と妹は多いけど、姉と弟ものは殆どないのは何故なのだろう?」


あまりに熱くなり、一気に長い話が口から勢いよく出てしまったことに、僕はハッとした。


ベッドの上の紗奈を見るとニマニマした顔で僕を見ている。


僕は自らの失態を悟った。


「そっかぁ、義理の妹とは結婚出来るんだぁ〜。調べたんだ〜?」


うんと言うと、さらにニマニマされるし、いいえと言うと嘘になる。

理由はどうあれ、調べは、した。


うんともすんとも言えず、僕は固まってしまったので、紗奈は布団に丸まったまま、そっかぁ〜、そうなんだ〜と言いながら、ベッドに転がりゴロゴロしているのを、見ているしか出来なかった。

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