8日目「結婚しましょう。」

「結婚しましょう。」


僕のベッドの上で座りながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


何のことか分からずに、僕はシャーペンを持ったまま、紗奈の方にくるりんと椅子を回転させた。


「高校生ではまだ早いと思うよ?後、年齢的に僕らはまだ結婚出来ないよ?」


「じゃあ、せめて結婚届けにサインだけでもして義父さんとお母さんに報告して、イチャイチャしましょう。」


僕の枕を抱き抱え、スマホを持ったまま、何故か紗奈は手を大きく広げた。


「突然、どうしたの?」


いつも変な紗奈だけど、今日は更に変だ。

迂闊に近寄ったら、捕獲されてそのままエンディングを迎えそうな気配すらする。


「私の飢えに飢えていた幼馴染恋愛欲求が、満たされてしまったわ。」


そう言って、見ていた小説をスマホで見せてくる。

幼い頃から、結婚の約束をしていた幼馴染と結婚してイチャイチャする話か。


へ〜。


なかなか、ここまで心が満たされる話も無いかもね。

ハッピーエンドって良いよね。


「ここに私の幼馴染としての理想の全てがあるわ。

もう良いじゃない。颯太ふうた。結婚しましょう。」


「落ち着け、暴走娘。何度も言うが、まだ僕らは結婚出来ないよ。」


「はふ〜、仕方がないわね〜。じゃあ、この余韻に暫く浸るわ〜。」


そう言って、紗奈は僕のベッドにゴロンと転がり、いそいそと僕の布団にくるまった。


どうでも良いけど、最近、僕のベッドなのか紗奈のベッドなのか分からなくなる。


時々、紗奈がそのまま寝るので、隣の部屋にお姫様抱っこで、運ぶことも多くなっている。


落とさないように、日々鍛錬しないといけない。


とりあえず、僕は紗奈が大人しくなったので、勉強を再開する。


えーっと今日は数学で確率が3C2の時に、、、。


今日は紗奈はそのまま起きなかったので、いつものように隣の部屋に運んで、寝かせておいた。


「、、、おやすみ、紗奈。」

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