105日目「颯太ぁ〜。」

「颯太ぁ〜。」


僕のベッドの上で、寝転がって足をバタバタして、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは、唐突にコロコロ転がり出して、僕に呼びかけた。


「ん〜、どうしたー?」


「イチャイチャしよー。」


僕はペンを置き、紗奈の隣に移動する。

そこに迷いは不要。


「えへへ〜。」

紗奈は早速、僕の腰にしがみつく。


「ジレジレはもう良かったの?」

紗奈の唇にリップクリームを塗る。

紗奈のあごに手で触れ、唇が荒れていないか角度を変えて確認。

紗奈はされるがまま。


大丈夫そう。

こういうのは日頃のケアが大切だ。


キスをしなかったのが、少し不満そうな紗奈。

仕方ないなと、リップクリームを奪いすぎないように、軽く唇を重ねる。


「考えたんだけど、ジレジレはもういっぱいしたから、もういいや。」

「うん、昨日僕が同じこと言ったね。」

「そう、、、。あれは私たちが中学3年の受験前のこと、、、。」


「あ、そんな唐突に思い返すんだ。」


僕は紗奈の頭を撫でる。

紗奈は嬉しそうに目を細める。

紗奈の唇がリップクリームで艶が出ていて、ゴクリと息を飲んだのは秘密。

本当に際限なくなるから。


「そうよ?

あの頃、私は颯太とクラスも離れて、荒れた毎日だった。」

「割と頻繁に僕の部屋に漫画借りに来たよね?受験前なのに良いのかなとは思ったけど。」

「口実に決まってるでしょ?

あの頃から、私は颯太を監禁したかったからね。」

「あれ?実は今、僕は監禁されてるの?」


たしかに紗奈に腰に巻きつかれ、動きを封じられてる。

所詮は紗奈なので、力で外せるけど外したくないのでそのまま。

でも、これって捕まえているのは紗奈なのか、それとも僕なのか。

紗奈は僕をじっと見る。


「少なくとも私は、あの時点で颯太とどうやったら永遠に過ごせるか、そればかりを考える毎日だったわ。

お陰で受験は少し危うかったわ。」


「うん、ちゃんと勉強しようね?

あー、でも確かにあの頃、そんなに話は出来ていなかったね。

クラスも違うし、時々、紗奈が部屋に来ても長居はしなかったよね。」


紗奈がまだ僕を見上げている。

頬に触れると手に擦り寄られ、あまりの可愛さにゾクゾクとする。


「うん、頑張って颯太のベッドに転がったら、心臓バクバクして死ぬかと思った。

あの頃は、3分しか保たない身体で、颯太の部屋を訪れるのは、いつも命懸けだったわ。

、、、でも、そんな日々も母の悪魔のような一言で、全てが終わるかと思ったわ。

今日はここまで。

さあ、颯太、顔、顔近付けて!」


紗奈は指でちょいちょいと。


「すっごく気になる止め方するね?

あれ?何かあったっけ?」

特に問題のある出来事なんてあったかなぁ?と僕が思い返す。


紗奈は指でちょいちょいしてたが、待ち切れなくなったらしく、僕の袖を掴んで、自分から顔を近付けて、唇を、、、というか口を重ねてきた。

半分僕を押し倒す感じ。


「あっぐっ。良いから、もっぐ。」

何が良いのか分からないけど、今日の、昨日からの紗奈は情熱的だ。

もきゅもきゅ。


一旦、透明な糸を繋ぎながら口を離して、紗奈に見下ろされる。

息を整えながら、真っ直ぐに僕の顔を見つめ言った。


「続きはまた後日!」

「はいは、、むぐっつ!?」

紗奈から可愛らしい赤い舌が伸ばされ、口にかぶりつくように。

もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。





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