172日目第一部完「颯太、こっち来て。」

「颯太、こっち来て。」


紗奈は僕のベッドに座りながら、じっと僕を見てから紗奈はそう言った。


僕も椅子から立ち上がり、紗奈の隣に座り手に触れる。

紗奈が嫌がっていないことを確認しながら、口を近付ける。

これは僕の譲れないところだ。

紗奈が嫌がることはしない。

嫌がらないなら。


「んっ。」

紗奈が受け入れる際にぎゅっと目を閉じる。

もきゅもきゅもきゅもきゅ。


はぁ、と互いが息を吐く。

「、、、こういう体勢になったら、私たちもきゅもきゅしてしまうと思うけど、どう?」

「、、、するね。」

「イチャイチャってやっぱり性欲だと思うの。」

「ぶっちゃけたね。言葉にするとなかなか納得したくないものがあるね。」


紗奈は僕の目を覗き込むように見ながら、頬に手で触れる。

「そうね。

言い方を変えるわ。

貴方と繋がりたい。

貴方と同じ存在になりたい。

貴方と溶けるように一つになりたい。

どうしようもないほど貴方が欲しい。

そんな気持ち。」

「、、、それは情熱的だね。」

「程度の差はあれ、イチャイチャするってそういうことだと思う。

、、、だから、ね。

もきゅもきゅは止まらないと思う。」


「止める必要があるかな?」

「ないわ。

でもね、だから『イチャイチャ幼馴染』という作品は一度終わろうと思うの。

これ以上は私の考えるラブコメではないわ。」

「紗奈の考えるラブコメ?」


そこで紗奈は黙ってモジモジし出す。

、、、何故だろう。

幼馴染として過ごした期間か、それとも彼氏彼女となって、たくさんのことを話したせいか、紗奈が何を考えているか分かる気がする。


本来、小説の流れでいけば、ここは紗奈の考えるラブコメを説明するところだろう。


脈絡はない。

ないけれど、無言の声が聞こえた。

これは僕と紗奈だけに分かる雰囲気だ。

紗奈に顔を寄せるとじっと見つめられる。


やっぱりそうだと唇を重ねる。

「んっ。」

紗奈もしがみ付くように僕の背中に手を回す。

互いの柔らかな感触を味わいつつ、そのまま舌を絡ませる。

もきゅもきゅもきゅもきゅ。


ツイ〜っと。

紅潮した顔で紗奈は息を整えながら、口を開く。

「、、、こんな風に赤裸々に書いていくと我慢出来なくなって、近い内に18禁になってしまうわ。」

「、、、そこまで赤裸々にしないように。」


大きくため息を吐きながら、敢えて口に出す。

「まあ、言ってしまえば僕らはすでにそういう関係だ。

正直、ここまでの関係って普通ではあり得ない。

2人で過ごせる場所がそうそう無いのがほとんどだからね。」


「そうよね。だからラブコメの多くで幼馴染と部屋で2人で居るとどうなるか知りたかった。

それに私は正直、手を出して欲しかった。

颯太と既成事実が欲しかったし。」


「人にもよると思うよ。

関係を壊したくなくて手を出せないというのはあるだろうね。

僕も紗奈と両想いだと分からないと手を出せなかったし。

、、ただ、イチャイチャし出したなら、、、イチャイチャ出来る関係なら、手を出さない理由は僕には分からない。」


紗奈は僕の手を両手で握る。

「、、、そこまでは考えてたけど、その後ね。部屋で2人で居続けたらどうなるかまでは、想像してなかったわ。

、、、多分、ふと油断しただけで、私たちの子供が出来ると思う。

だって、颯太。

私と毎日でもしたいでしょ?」

グッと僕は息を飲み、、、目を上下に動かしなんとか顔を逸らさず、うん、と。


怒るでも、嫌がるでもなく、紗奈は優しく笑った。

「私は引っ付いているだけでも良いんだけどね。

カップルになってずっと部屋で2人で居たらこうなるんだとようやく分かったわ。

もうそろそろ限界よね。

この間の休みも2人でずっと、、、何分置きだった?目が会うたびにもきゅもきゅしちゃったし。

もう私たち夜はイチャイチャしかしてないものね。

ほんと毎日、もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、しか書けなくなる日がほとんどになると思う。」


僕は肩を竦める。

自然体でいればいる程、そうなるのが当然だと思う。

「、、、どうしようもないほどに幸せなのよね。

浮気をする人はこれを生涯知らないか、喪ってしまったか、どちらかなのでしょうね。

、、、だからかな?どうしようもなく喪うことが怖いと思うわ。」


「人は容易く易きに流れるからね。

紗奈、喪いたく無いなら人は努力しないといけない。

2人の関係は1人では維持出来ない。

喪わないために、僕は迷う気はないよ。


、、、よくあるセリフで、何年後かの関係はどうなっているか分からないという人が居る。


今を覚悟出来ない人に、その人との未来は永遠に手に入らないと思う。

紗奈、、、。

僕は紗奈が欲しい。

ずっと。

誰にも渡さない、何年経とうと。

、、、悪いけど、紗奈は僕以外の男と関係を持つことは生涯無いから。」


人は快楽に弱い。

だから身体の快楽に走りやすくはなる。

それは生命の本能ではあると思う。

大切なものを、大切な人を守りたければ、努力を怠ってはならない。

分かり合うことを止めてはならない。

僕はそう思う。

紗奈は僕にもたれ、胸にぽんっと頭を置く。


「、、、幸せ過ぎて泣きそう。

もう無理。

颯太と大人なイチャイチャする。

だから夜のことはもう書かない。」

「わざわざ宣言しなくても、、、。」

「、、、ちょっと書いてみたいことはあるのよねぇ。

結局、イチャイチャな幼馴染が部屋で2人で居たら、訳だけど、それ以外ではどうだったかなって。

だから、区切り。

正直、このまま書いても大人なお話にしかならないもの。

だからよね、ラブコメの先があまり多くないのは。

それとも別れるか、だから。」

僕は紗奈を優しく抱き締める。


「、、、そういうこと言われると。」

「うん、、、。」


お互いその先はまだ言葉にしない。

ラブコメという物語が終わっても、人生はそれからも続く。

恋をして、ようやく次のステージへ。

むしろ、そこからが始まりなのだと思う。


「ところで颯太!」

「うん?」

「今、すっごくもきゅもきゅしたい!」

「、、、まあ、僕もだけど。

今日は抱くよ?」

「な!?最終回だからってぶっちゃけ過ぎない!?」

「、、、別に僕らの日常は続くから。」

紗奈はぎゅっと僕にしがみ付く。

紗奈の赤くなった耳が可愛い。

「、、、うん。早く颯太の子供が欲しい。」

「、、、そうだね。」

でも、僕らはまだ高校生だ。

その言葉を僕は飲み込んだ。

紗奈も分かっていることだ。


もしも僕らが成人していれば、もう働いていれば。

高校生は昔なら成人で、今はまだ子供だ。

こういう関係には早過ぎて、、、。

ようやく僕らは高校2年。

籍を入れるのさえ、後558日も先だ。

なんで僕ら4月生まれじゃないんだろう。


「紗奈、愛してるよ。」

「私も颯太を愛してる。」

僕は紗奈の唇に自らの唇を重ねる。

それから舌を重ねる。

それは誰よりも愛しい存在を逃したくなくて。

淡い残滓を永遠にしたくて。

一つとなって離れたくなくて、僕らは繋がってしまうのかもしれない。


それでも僕らは恋をして、、、それから先はその人たち次第。

愛に辿り着くのか、それとも恋で終わるのか。

幼馴染という関係は始まりにしか過ぎなくて、他の人よりもアドバンテージがあるのかないのか。

それでもその淡い関係に人は憧れを抱く、のかもしれない。


きっと、ラブコメの先がほしくて。


、、、とりあえず、義理の兄妹で幼馴染の僕らは2今日ももきゅもきゅしてしまう。


とにかく、僕らは本気で数年後には子供を作る関係になるつもりだ。

、、、だから、ここからはラブコメでは、過激過ぎるから別の機会ということで。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅぺとぺともっきゅもっきゅもぎゅもぎゅもきゅもきゅもきゅウチュー、、、ぴちゃっ、あっ。

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