45日目「ツンデレって最近流行らないね?」

「ツンデレって最近流行らないね?」


僕のベッドの上で僕の足の間に入り、僕を背もたれにしながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは、唐突にそう言った。


何故だろう?


こうして、2人で部屋に居るのが随分久しぶりな気がする。

毎日、紗奈は部屋に居るはずなのに。


「今日は何を見たんだ?」


腕の中の温かさを感じつつ、紗奈の頭に顎を乗せ僕は尋ねる。


「うーん、特に何か見た訳じゃ無いけど、最近ないなぁ、と。なんで?」

「いや、知らない。」


ぶー、っと紗奈はムクれる。


「なんで〜?ツンデレ可愛いのに。」

「一時期流行ってたけど、ある時から一気に叩かれるようになったね?

ツンデレじゃなくて、既にイジメっぽい感じに。」


「そうそう、その時に犠牲になったのも、やっぱり幼馴染だったわ。酷い!」


いや、酷いと言われても、、、。


「でも、まあ。分かりやすいツンデレなら可愛いけど、分かりにくいツンデレは大変だね?」

「そうかもしれないけれど、私は思ったわけよ。

毎日学校の行き帰りも一緒なぐらい仲が良い幼馴染なら、ざまあとか言ってないで、悪いところは注意ぐらいしてあげたらどうなんだ?と。」


「あー、まあ確かに。大体そういう時、女の子のツンデレを男が止めずに野放しにしてるくせに、突然キレ出して、縁を切ってモテ出すパターン、よく見たね。

注意してあげなよ、とは思ったかなぁ。

人それぞれなんだろうけど。」


「でしょでしょ?

誰よりもあんたが注意しないとダメなんじゃないの?と。」


そこで紗奈は僕に首だけ振り返る。

「ということで、ツンデレするかもしれないけど、ざまぁとかしちゃダメだよ?」


「あー。ざまぁはないけど。するかも、なんだ。」

「うん、するかも。

あと、話は飛ぶけど颯太って頭は悪くないよね?」

「成績は紗奈に勝てないけどね。」


この間それで喧嘩したけど、もうイラついたりはしない。

あの時は僕も疲れすぎていたのだろう。


「それなんだけど。颯太って勉強しすぎなんじゃないかな?」

しすぎ?って何?


「勉強は時間をかければかけるほど伸びるよ?」

「それなんだけど、怒らずに聞いてほしいんだけど。」


紗奈はわざわざ、僕に顔を擦り寄せ、甘えながら言葉を続ける。

この間、それで喧嘩したから、嫌味で言っているわけではないということを態度で現しているのだろう。


「私は颯太と居たいから、寝起きと寝る前と颯太の部屋に来る直前の3回に、スマホとかにデータを入れて集中して暗記物をしてるの。


それ以外の内容は帰って来て、まとめたノートを更に整理して頭に入れてるの。


授業中は先生の口頭だけで言った内容をメモって整理して、数学なんかは、授業中の問題を解く時間に、先の方まで一気に計算したりしている。」


一気に言われ、即座に理解出来なかったので、もう一度聞く。


、、、なるほど。


効率と集中を心掛けているのは分かった。


それからすると、たしかに僕のやり方は効率面で劣っている。

どうしても集中出来ない時間があって、そこに力を込めても効率が悪くなるのだ。

それでも無理して、机に座っていた。


「成績下がったら、お母さんに颯太の部屋に行っちゃダメって言われたから。」


全てはそのためらしい。

「そんなに僕の部屋に来たかったの?」

「うん、颯太の匂いを吸わないと無理。」


僕は自分の顔を抑える。

なるほど。

実に素直な娘さんだ。


「とりあえず、僕ももう少し効率を考えるようにするよ。」

「そうして!そうして!」

えへへ〜っと嬉しそうに紗奈はまた僕に顔を擦りつけた。


とりあえず、紗奈のツンデレ化は難しいことは分かった。

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