114日目「由緒正しき屋上シーン減ったわね。」

「由緒正しき屋上シーン減ったわね。」


僕のベッドの上で、仰向けに寝転がって、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは、唐突にそう言った。


ある程度、今日のノルマは終わったのでペンを置き、椅子を回転させる。

「最近は入れなくしているところも多いからね。

うちの学校も普段は閉めてるでしょ?

、、、一度だけ行ったことがあるけど、昼寝している不良も告白している男女も、誰も来なくて寂しい感じだったよ?」


「あ、5月の連休明けの5時間目でしょ?

颯太が突然居なくなってたから、何処行ったのかと思ってたら、5時間目終わった辺りで、屋上に繋がる階段から降りて来てたでしょ?」


「気付かれてたのか。」


あの頃、紗奈に声掛ける男がちょくちょく現れて、そいつらと話して笑っている紗奈を見ていると、何かこうモヤモヤして。

1人になりたくなって、初めて授業をサボってしまった。


「あの時、他クラスの男子がしつこくてウンザリしてたから、私の癒しの颯太を凝視しようと思ったら居なくて辛かったわ。」

「楽しそうに話してなかった?」

「あははと笑いながら、断固遠慮しますと言い切ったわよ?

幼馴染覆盆危険ゾーンに踏み込むなんてまっぴらごめんよ。

愛の戦場に他の男はいらんですたい。」


むふーと気合を入れる紗奈。

成る程、、、。

「それは男前なことで。」


紗奈はバシバシと自分の隣を叩く。

紗奈の隣に座る。


紗奈はいつものごとくガシッと腰を掴み、スマホで引き続き、ネット小説を読む。

「最近は嘘告ネタも減って来たのと、美人の先輩から突然、告白されるネタも減ったからかな?

最初からほぼ関係が出来てるものが多い印象。

また変化していくとは思うけど。」


「屋上ネタは既に古き時代へと移っていったのかな。

新たな世界がまた生まれるわけだ。」


紗奈の頬に触れる。


「幼馴染物は不滅よ。

ところで颯太、気付いたんだけど。」

「ん?」

「もきゅもきゅしちゃうと、、、スイッチ入るでしょ。」

僕は紗奈の頬に手を触れたまま、動きを止めた。


「こう舌と舌が当たった時に、こう、、、なんていうの?とにかく、スイッチ入るから、もきゅもきゅが止まらないんじゃない?」


僕は紗奈の頬に手を置いたまま、目を逸らす。


「、、、颯太気付いてたわね?」


僕はちろっと紗奈を見る。

特に怒っている訳ではなさそう。

「怒ってる?」

紗奈は、んーと首を横に振る。


「スイッチ入るのは、、、もきゅもきゅするのは仕方ないから、ある程度、決めちゃったらどうかなって。」

「それは、、、制限するってこと?」


「ううん。

制限じゃなくて、しない時はしないで。

もきゅもきゅするんだったらするで、、、。」

そこで紗奈はちょっと上を見て、目がウロウロ。


「もきゅもきゅするならするで、満足するまでってことかな?」

恥ずかしそうに横を向いて、それからこちらをじっと見た。

うん、と紗奈は頷く。


「、、、確かにその方が良いかもね。」

僕は愛しげに紗奈を見つめ返す。


じゃあ、とお互い口にする。

そして、紗奈はちょっと恥ずかしそうに笑う紗奈に僕は告げる。

「、、、頂きます。」

「、、、召し上がれ。」


そうして、僕は紗奈の口に口を重ねる。


もきゅもきゅ、、、。

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