第57話「ふっかぁぁああああああつ!!」
「ふっかぁぁああああああつ!!」
紗奈はベッドの上で唐突にそう言って両手を挙げた。
それから僕を手招きして、ベッドの上に登った僕と口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……って長いな。
ようやく口を離した僕ら。
紗奈が少しとろんとした目をしている。
危ない危ない。
まあ、そのままなし崩しにさらにイチャイチャするのは時間の問題なので、それはもう少しあとで。
濡れた紗奈の唇を指でそっと拭うとその指をパクッと咥えられた。
もごもごと指をしゃぶられる。
「はい」
しゃぶった指を離し、僕の方に向ける。
くわえろと?
パクッと咥えといた。
紗奈の口の中の味がしなくもない。
気のせいかもしれない。
「そういうわけで最終回です」
「どういうわけ!?」
「いやぁ〜、前から決めてたんだけど忙しくて今になっちゃってー」
「ああ、前に言ってたね」
「そうそう。
大体の人がそうだと思うけど、書くってことは訴えたい何かがあるのよ。
テーマだったり、セリフだったり、ワンシーンだったり。
私だったらこ〜イチャイチャしたお話が読みたいエネルギーが溜まりすぎたら、いいやもう自分で描いてしまえとなるわけよ」
「ほうほう」
「そこでイチャイチャ幼馴染を更新しちゃうと、そこで訴えた内容については満足しちゃうわけよ。
それはよろしくない!!」
紗奈は立ち上がり拳を突き上げる。
お腹が大きくなっているから無理するんじゃないぞ〜。
紗奈、自分が妊婦だってこと忘れかけてないよね?
僕の心の声が届いたのか届いてないのかわからないけれど、紗奈はすぐに座って僕の口に自分の口を重ねた。
もっきゅもっきゅ。
ぺろりと口に周りを舐めて紗奈はさらに続ける。
「でもね、自分なりにという感じにはなるけど、私はもっと物語を描きたいし読みたいのよ。
ここでもきゅもきゅ幼馴染書いて満足していてはいけないのよ。
人はね、前に進んでいかなければいけないの。
いつまでもテンプレテンプレテンプレ、もう良いから次行くよ!
あ、でも幼馴染イチャイチャは永遠の物語だから。
……次書くの幼馴染からの寝取り浮気純愛ものだけど」
「前言ってた話だよね」
「そう、結局イチャイチャなんだけどね〜。
どの物語も訴えたい言葉エネルギーを溜めないと途中で書く気力無くしちゃうしね。
だからもきゅもきゅ幼馴染の物語はここでおしまい!!
私は次のステージに行くのよ!」
「そうかぁ〜」
ようやくこの晒し日記も終わるのか。
実に感慨深い。
紗奈はスマホを枕の上に置く。
そしてその前で正座をして頭を下げる。
「今まで応援してくれた方ありがとうございました。
この黒歴史は前回と違い、非公開にせず晒しておきます。
気まぐれにまた読んでくれると嬉しいです」
それでカクヨムの向こうにいる読者に届くわけでもないけれど、紗奈は深く頭を下げる。
僕も一緒に頭を下げておいた。
こういうのは気持ちの問題だ。
「さて!
そういうわけで颯太!
イチャイチャするよ〜」
「さっきもして……もぐつ」
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。
僕らは口を重ね舌を絡め合う。
今日も、間違いなく明日も。
もきゅもきゅと。
こうして僕らのイチャイチャな日々は続いていく。
この話は本当にそれだけの、ラブコメ後の愛し合う夫婦の物語。
ずっと。
ただそれだけ。
おしまい。
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