第56話「……ねえ、ラブコメ書こうとしたらもきゅもきゅしだすんだけど、どうしたらいい?」
「……ねえ、ラブコメ書こうとしたらもきゅもきゅしだすんだけど、どうしたらいい?」
紗奈は僕にしがみついて、ひとしきりもきゅもきゅした後に、スマホの画面を僕に見せながらそう言った。
「どうしたら……ってどれ?」
「これ」
そう言って紗奈が指し示した画面には、紗奈が少しずつプロットを書きためている新作ラブコメがあった。
前から言っている寝取り浮気だけど純愛とかいうよくわからない作品だ。
「ここの中盤に差し掛かる時点で、ジレジレとか置いてもきゅもきゅしだすんだけど、どうしたらいい?」
「どうしたら……って、もう少し告白を遅らせたり気付かないフリしたり、告白の勇気が持てないとか、そういうシーンを入れたら?」
「でも両想いなのよ?
相手と相思相愛の気配したら、これはもうもきゅもきゅするでしょ?」
「……しないんじゃないかなぁ〜?」
「嘘!?
私たちのときだって思い出してみて!
むしろイチャイチャ幼馴染の内容読み返してみて!」
……2人でしばし読み返す。
「……26日は粘ったわ」
「改めて見ると、やっぱりこれダメだよね?
僕らがなにしたか晒しすぎてる」
「……うん、わかってる。
刻は近い、目覚めるときがきたのよ」
紗奈がなにやら闇ノサダメに目覚めたようだが、妊婦なので無理はしないでほしい。
「それでもきゅもきゅしちゃうのよ。
両想いなんだからするでしょ?」
「繰り返すけど、普通しないと思う」
「嘘っ!?」
エンドレス〜。
紗奈は力を抜き、僕にもたれかかる。
「月曜日と火曜日は小説を描きたくなるの。
そして水曜日は疲れて書けなくなるの。
この繰り返し〜。
この2人もすぐもきゅもきゅしようとするし」
紗奈はスマホで書いてるプロットの2人を指差しそう言う。
「紗奈のラブコメって全部そうだよね?」
「嘘っ!?
……ほんとだ。
私はもう普通のラブコメは書けない身体になってしまったのよ!」
「最初からだよね?」
「そうとも言うわね。
いま思いつきで気付いたけど、今回の私たちの会話はASMR向きよねぇ〜」
「あれってどうも会話オンリーを求めているみたいだしね、小説ではないよね」
耳で聞く会話劇っぽいから仕方ないのだろう。
「それにもきゅもきゅしてるから、ASMR向きじゃないよね?」
もきゅもきゅはセンシティブ過ぎる。
「そこは秘密。
さ、颯太。
余計なことを言ったから口で口封じするね」
「はいはい」
そう言って僕らは口を重ねる。
口実はなんでも良いのだ。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
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