第55話「アアアア!小説が!書きたい!!!!」
「アアアア!小説が!書きたい!!!!」
紗奈はベッドの上でスマホを掲げて、唐突にそう言った。
「いま書いてるよね?」
もきゅもきゅ幼馴染が更新されている。
「これは違う!
違うのよぉ〜!」
紗奈はベッドをバフバフ叩いて訴える。
「そうなんだ?」
「それか純愛物が読みたい」
「アルファ◯リスは?」
「あれって令嬢モノが多いのよ。
それはそれで好きだけど、私の心の中のラブモンスターは現代(?)モノに飢えているのよ」
つまりラブモンスター注意報らしい。
「新作も書きたくてプロットまとめているんだけど、いざ書けるときが来たら満足して書かない可能性もあるわ、気分的に」
「気分的にかぁ〜」
紗奈は僕にベッドにあがるように手招き。
誘われるがままに紗奈の隣に。
もうそれが自然と言わんばかりに口が重なる。
もきゅもきゅ。
「書きたいものが色々ある中で、今度こそもきゅもきゅは最終回を迎えることにするわ。
あっ、今日じゃないわよ?」
「まただね?
今回はどうして?」
「うん、それについてはまた今度。
とりあえず今は……書きたい!書きたい!!
書きたーーーーい!!」
一度はもきゅもきゅで大人しくなった紗奈が今度は足をジタバタさせて叫び出す。
「お腹に響くから落ち着いて!」
僕が慌ててそう言うと、紗奈はピタッと動きを止めて口元を可愛く指差す。
うん、結構冷静だね?
要求通り、紗奈の口に再度口を重ねる。
もっきゅもっきゅ。
「書きたいっていうのは、寝取り浮気だけど純愛とかいう不可思議なやつ?」
「そう。寝取り浮気だけど純愛」
うん、聞いているだけでわけがわからない。
「書いたら?」
紗奈はわざとらしくフッと笑う。
「書いてしまえば、人気の無さで凹んで書くのをやめてくなるから嫌よ。
だって私が読みたいような話だもの」
「あー」
僕個人としては、紗奈がすきな話は変な話ではないと思う。
単純に流行に乗ったラブコメではないだろうから、評価自体が付きづらいのは仕方がない。
「でも、書きたいの!
書きたすぎてプロットがほぼ完成してしまったわ。
あとは数人の登場人物のことを整理すればいつでも書けちゃうわ!!」
「数話だけでも書いたら?」
「序盤の区切りは確かにあるわ。
大体、6話ほど。
でも6話で推定12000字。
1時間1000文字として12時間。
そんな時間は無いわ!」
「それはどうしようもないね」
プロではないのだ。
時間を確保する口実も必要だ。
日常の中で優先順位があるからまだ書いてもいない作品の順位は高くないだろう。
「とりあえず颯太にもきゅもきゅして耐えることにするわ」
紗奈は僕の方に手を伸ばす。
なお、紗奈だけではなく僕らにとってもきゅもきゅの優先度が高いのは言わずもがな、というものである。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
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