第49話「テンプレは良いんだけどさぁ」

「テンプレは良いんだけどさぁ」


ベッドでゴロンと転がりながら、紗奈はスマホでカクヨムを見ながら唐突に。


「良いんだけど?」

「転生でやり直しってのだけは無理あるよね」


それはまあわかる。


「でも転生でやり直しで始まると、そのあとはなにが起こっても深い話にはならないから気楽な話が読みたい現代人に丁度良いんじゃなかったっけ?」


「そうね、その通りね。

私は深い話の方が好きだから、そこが合わない理由の最たるものね。

そうは言っても、もう前ほどイライラしたりはしないし、今なら私もテンプレ書ける気がするわ」


「書けるかなぁ〜?」

以前もテンプレを挑戦しようとして失敗してたよね。


「今度は多分書ける。

テンプレの捉え方が変わったから。

ライトノベルとは別物で神話とか説話イメージ、あといま颯太が言ったように重くならないための舞台装置と思えば良いんだとわかったし」


ふむふむと僕は頷いて、ふと首を傾げる。

「それならいまのはなに?」

「いまの?」


首を傾げる僕に紗奈も首を傾げて僕に顔を寄せた。

なので、僕はその紗奈の頬に手を添えて、おもむろに唇を奪う。

ついばむように唇をもてあそんでから、水気を絡ませて舌を舌で味わう。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


ちゅっとリップ音を鳴らして、口を離すと甘えるように紗奈が僕にもたれかかるので、軽く抱きしめて頭を撫でておいた。


「……それでいまのってなんのこと?」

「ああ。

転生やり直しが無理があるって話はどういう意味?」


紗奈は、あーっと納得したように頷く。

「もう少し詳しく言うと……。

ついさっき面白いアニメ見てたんだけど、人の葛藤とか生き方とかがこう……グッとくる話で。


転生やり直しの時点でこういう生き方とか葛藤とかでの面白さは捨てないといけないんだなぁと思ったのよ。


お気楽に特化しているのが、転生やり直しの特徴なんだろうなぁって。

私にとって面白い話っていうのが、そっちの深い話の方だから面白いと思う事はあんまりないけど、それでもお気楽であることをわかっていれば、面白い部分もあるよねっていうことを端的に」


「なるほど……」

実にわかりにくい言い回しである。


とりあえず……と言いつつ紗奈は口元をちょんちょんと指差し、んべっと舌を出したので。


僕らはまたいつも通り口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。

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