アフター3話「ついに私は気づいたわ」
「ついに私は気づいたわ」
適度にもきゅもきゅしつつ、ベッドに2人で転がっていると紗奈が唐突にそう言った。
ちなみに娘の姫奈は今日もすぴすぴと心地よさそうに眠っている。
寝る子は育つ。
「なにに気づいたんだ?」
「日常系幼馴染物語について」
「ほほう」
もはや僕らがもきゅもきゅしているだけに成り果てたもきゅもきゅ幼馴染は、そもそも紗奈が日常系幼馴染物語を読みたいがために僕らの日常を晒すという暴走から始まった。
紗奈曰く、検証した結果。
愛し合う幼馴染が2人で部屋に居たら、さっさとエンディングを迎えてしまうのが世の摂理であるとのこと。
そりゃまあ、本気で好きなら手を出さないわけがない。
大切に手を出さないという考えは大切ではあるが、相手と一生を共にする覚悟がある人が手を出さないでいる意味はないのだ……と思う。
「ならば日常系は恋愛関係にない幼馴染、もしくは部屋の外でないとあっという間にラブコメは終わるよね」
「しかぁし!
そこであえて、あえてよ?
全ての真実を分かった上で、幼馴染を部屋に2人で置いてみてはどうだろうかと私は思ったわけよ」
紗奈は両手を挙げてそう主張した。
「お互い愛し合ってるけど部屋で2人?」
僕らのようになるのは分かり切っている気がする。
「愛し合ってるけど、両片思いね。
でも2人ともが最初から他の人に行く気もなければ、アプローチされても興味を持たないの。
他の人だと意味ないし、恋愛としてはいらないかなとさっぱりと言い切るの」
僕はう〜んと腕組みして唸る。
「でもそれって……言ってはなんだけど男の方は我慢できるものじゃないよ?」
「そうなんだよねぇ〜。
そこで!
それについては目をつぶる!
……とにかく我慢してもらう!
世の中、どこかの流行りになってしまった寝取りばかりじゃないから!」
「あ〜、まあ、ジレジレしたいならそれしかないかぁ」
紗奈は僕によじよじ登るようにしてしがみ付く。
そして紗奈は深くため息を吐く。
「ふ〜、ただ一つ問題があるのよねぇ……」
「どんな問題?」
その紗奈の頭を撫でつつ、僕は尋ねる。
「週の半ばだと私が疲れ切って書けなくなる……」
「うん、それはどうしようもないね」
「あと日常系ラブコメはテンプレじゃないから応援がもらえないかもしれない!
そうすると私はあっという間に力尽きる!
あとついでに、どうしてもきゅもきゅ幼馴染がここまで応援してもらえたのかはわからない!」
「それは永遠の謎だね……」
「とりあえず颯太ともきゅもきゅして寝る!」
「はいはい」
「はいは一回!
おやすみ、颯太」
紗奈がそう言って、僕らは口を重ねる。
おやすみ、紗奈。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
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