649日目(残り81日)「やってしまった……」

「やってしまった……」


紗奈がカクヨムを開いたままベッドに伸びて唐突にそう言ったので、僕は無言で紗奈の隣に寝転がり開いているカクヨム画面を見る。


「なんだ、公爵の話を更新しちゃったんだね」

「しちゃったのよ、ストックなんてほぼないのに。

何かに追われるように、やってしまったわ」


紗奈は尺取り虫のように僕の上に乗る。

「とにかく補給が必要だわ……」

紗奈機は僕の上で補給をするらしい。


紗奈はそのまま僕の口に自分の口を重ねる。

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


最後にちゅっとリップ音を鳴らし口を離す。

「美味し……」

そう言って艶やかに笑う。


もう紗奈のなすがままである。

「今日はなんとなく叫びたい気がする。

颯太、私の口を口で塞いで〜」

「はいは一回、もぎゅっ」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


互いの唇で遊ぶように、擦り合わせたり軽く感触だけ確かめたりしてから、おもむろに紗奈は言う。


「まあ、実際、キスでももきゅもきゅでも声って防げないんだけど、物語では時々あるよねぇ〜、私もその言い回し使うけど」

「やめなさい」


そう言いつつも、紗奈の頭を撫でると嬉しそうに擦り寄ってくる。

「そう言えば以前も同じ言葉を唐突に言わなかった?」

「やってしまったって?

うーん、あっ!」

紗奈はイチャイチャ幼馴染を確認していると何かに気付いた。


「随分前にケンカしちゃった時だ。

颯太! 危険よ!

ケンカの後のイチャイチャモードが発動するわ!!」


「イチャイチャモードって、また懐かし……むぎゅっ」

言い切る前に紗奈に口を奪われる。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


「紗奈、紗奈」

「何? 颯太。

今、颯太ともっきゅもっきゅするので忙しいの」

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


「紗奈、今、スイッチ入ってるよね!?」

「うん、スイッチ入ってるよ」


紗奈がそう言ったので、僕は紗奈を優しくひっくり返す。

「はれ? 颯太を襲ってたら、颯太に襲われる?」

「うん、頂きます」

「……召し上がれ」

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。

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