2024年6月16日「書かないと書き方忘れるのよねぇー」
「書かないと書き方忘れるのよねぇー」
居間でラーメンをすすりながら紗奈は唐突にそう言った。
「まあ、いまは時間もないし仕方ないんじゃない?」
姫奈がハイハイで絨毯の上を爆走している。
可愛すぎる……。
この子が紗奈と僕の血をわけた子供だというのが、またなんとも心から熱いものが込み上げてくる。
姫奈を抱き上げ、優しくその背をぽんぽんとする。
赤ちゃんの体温がまた温かい。
たしかに姫奈が自分と紗奈の子供なのだと再度、実感する。
ラーメンを食べ終わった紗奈がじーっと見てくるので、もう片方の腕で抱き寄せると大人しく寄り添ってきた。
ちょっと聞いただけの不思議な実験のお話。
男の人が生まれたばかりの子供がどの子か、実験をした結果。
86パーセントの人が赤ちゃんを自分の子だと見分けられたらしい。
その14パーセントがなんなのか、とか信憑性はどうだとかは不明だけど。
あう〜と僕にもたれかかる姫奈の横で紗奈が僕を見上げてくるので、すっと紗奈の唇に口付けをする。
「ちょろっとだけ書いてみるとか?」
勉強とかでもそうだ。
一気にやろうとしても人はやる気は出てきたりしない。
5分とか、ほんの少しだけでもやることで次第にやる気が出てくるものなのだ。
紗奈は返事の代わりに、表情で口付けを求めてきたので口を軽く重ねた。
もきゅもきゅ。
それに満足したのか、紗奈も話を続ける。
「私の場合、憑依型だからある一定の余裕がないと物語の世界観に入って続きを書くのが難しんのよねぇ〜」
「なるほど」
それは人それぞれのタイプの違いともいえよう。
それはそのまま小説を書くスタンスの違いでもある。
「いまは脳みそを使わない純愛ものだけを探して読んでるわ」
書くのと読むのは別腹、そういうことらしい。
「ん」
そう言って、また紗奈が口付けを催促するので、ご期待に応えて口を重ねた。
もきゅもきゅ。
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