1年と156日目「こう……カチッとスイッチが入った感じよ!」
「こう……カチッとスイッチが入った感じよ!」
紗奈は僕らのベッドに倒れ込むや否や、唐突にそう言った。
僕は机の上を片付けて椅子をクルンと回転させた。
「どういうこと?」
紗奈は両手を挙げて万歳しながら、さらに言った。
「ギャグスイッチ」
「ギャグスイッチ」
「そう、ギャグスイッチ」
僕は少し間を空けて……首を傾げる。
「ナニソレ?」
「ふっふっふ、人生にはね?
ある日突然スイッチが入ることがあるの。
読みたい話を読み切って、お気に入りが完結を迎え、新たなお気に入りも見つからない。
そんな心の砂漠が訪れる時、ふと思うの。
無いならいっそ、はっちゃけた作品を自分で書いちゃえば、とね」
「ああ、うん」
「普段なら、PVに一喜一憂して、そしてランキングが気になって、次第になんだか魂を削って書く事に疲れ果てて……。
でも、ある時気付くの。
迷って書かないよりも悩まず書く方がマシだって。
その結果、駄作でも良いじゃないの。
もっとも大事なのは自分が楽しむ話を世に生み出すことよ!」
なるほど。
確かに何も無いよりも、何かが生まれた方が断然良い。
僕は紗奈の隣に座り、紗奈の頭を撫でる。
それが良いとか悪いとかよりも、紗奈が楽しそうなのが1番僕にとって良かった。
紗奈は撫でられて嬉しそうに笑う。
「でも書いたら眠くなったわ」
言うだけ言って紗奈はコロンとベッドに転がる。
転がっただけなのに、なんだか催促された気がして、僕はそのまま寝転んだ紗奈の口に口を重ねた。
もきゅもきゅもきゅもきゅ……。
そしてふと気付く。
何かを書こうとスイッチが入っても、それは別にギャグスイッチではないことに。
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