日々は続く「終わりにしましょう。」

「終わりにしましょう。」


僕のベッドの上で、僕の足の間で僕を背もたれにしながら、スマホ片手に時々振り返り、僕とイチャイチャしていた紗奈は唐突にそう言った。


「イチャイチャを?」

確かにキリがない。

僕も紗奈が腕の中に居て、止められる気がしない。

でも、止めなくてもいいんじゃない?

イチャイチャしたいし。


「イチャイチャは続けるわ。

ずっとよ。」

「ならいいや。」

ちゅっちゅっと唇を重ねてしまう。


そうしながら尋ねる。

「じゃあ、何を終わりにするの?」


「これよ!」

紗奈は僕にスマホを見せてくる。


あー、あー、これかぁ、、、。

唐突だよねぇ、、、。

紗奈が唐突なのはいつものことだけど。

『イチャイチャ幼馴染(義理の妹)紗奈と僕の夫婦への730日』


「、、、前から思ってたけど、何でこれ、僕が主人公なの?

紗奈で良くない?」

「颯太、、、気付いていたの!?」

超有名漫画なら、白眼で背後にベタフラッシュが飛び散るような表情で、紗奈は驚く。

さらに僕の腕の中のまま、紗奈は一歩下がるように身体を引こうとするが、、、引き寄せて唇を奪っておいた。

ついでに口の中も。


もきゅもきゅ。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


もきゅもきゅ、、、。


「しつこい!と怒られるから。

、、、後でね。」

ちょっと興奮しそう。

紗奈は口を拭いながら、僕の身体を手で押して離す。

誰に?

これをそのまま書かなくても良くない?


「コレはラブコメタグだけど、実際はドキュメンタリーだから。」

「いや、エッセイじゃないの?もしくは創作論?」

「どれにしてもタグ詐欺ね。」


ふー、と息を吐く。

「いつもながら唐突だね。」

非難はしていない。


「そうね。人生はいつも突然なのよ。」

ふふふ、と笑う。

紗奈は僕にもたれながら話を続ける。


「実際ね、物語である以上、いつか必ず終わらせなければならない。

それがどんな酷い終わりであろうとも。

そうして初めて、その物語の世界は次の物語を紡ぎ出す、てね。


当然、エッセイとかは別ね!

いつまでも続くべきね!

書いている人の人生は続いて、新たな物語がいつも生まれてるのだから。


この話もそう、小説の形を取ったからには、ちゃ〜んと終わらせる。

730日いかなかったけどね。

まあ、730日目のことをまた書くかもしれないけれど、一旦おしまい!

試したかったこと試したしね!」


「何を試したかったんだ?」

僕は紗奈の髪に優しく触れ、頭を撫でる。


「惚気を書きたかった訳じゃないよ?そりゃちょっとはあるけど、、、。

書いてみないと分かんないことがいっぱいあったからね。

例えば、、、『同じ部屋で男女がイチャイチャしてたらどうなるか!』

結論は、、、。」


「まあ、我慢なんて出来ないよね、、、。」


紗奈はクスリと笑う。

「そうなのよ。人にもよるんだろうけど、女の子はイチャイチャだけでも良いんだけど、男の子は無理なんだな、って書いてて初めて分かったわ。

だから、ラブコメ主人公は優柔不断でヘタレじゃないとダメなのよ。

普通の人だと物語のじれじれがあっという間に終わっちゃうから。」


成る程ね、、、書いて初めて分かるか。


「まあ、私の場合、書いててその人の気持ちになり過ぎて、鬱な時は本当に鬱になるわ。

書いてて泣いてしまったこともあるわ。」

それはそれですごいな、ああ、まあ、紗奈だからな。

感受性が強いのだろう。


「他にも自分の作品とか、人の作品広告したら、盛り上がるのかな?とか、、、エッセイとか創作論で書いてるような、イチャイチャに惹かれるのだろうか?とか。


、、、私が他の作品のイチャイチャに惹かれるようになってしまったわ。」


まあ、僕も幼馴染物はつい開いてしまう。

幼馴染の浮気物だったら、すぐ逃げるけど。


「まあ、つくづく思うのは、応援してくれる人が喜んでくれると、書いている方はとんでもなく楽しいってことね。

そうだ!颯太聞いてよ!

なんとこのイチャイチャ幼馴染!8万PV超えよ!

すっごく嬉しい!!」


良かったね、と頭を撫でる。

でも、その後すぐに、紗奈はぐったり。


「、、、でも詐欺師の話は、その3倍24万PV、、、。

皆〜ダメよ〜、それは詐欺師よ〜、詐欺師の話なのよ〜、、、騙されてはダメよ〜。

幼馴染は出て来ないわよ〜、、、。

ファンタジーは人気なのかしら?」


3倍って、赤い人ですか?


「ま、それはともかくとして、書きたいことはまだまだあるけど、ダラダラは良くないと思うの!

まあ、書こうと思ったら、私の中学の時のじれじれ恋愛を書けるけど、アレって私の気力が保たないから、、、。」


そう言いながら、前置きもなく、のしかかるようにしながら、僕の口を紗奈が奪いに来る。


ベッドに僕が押し倒されたような感じ。

紗奈がぺろりとピンクのキレイな舌で舌舐めずり。


美味しそうだったので、ちょいちょいと手招き。

紗奈が不思議そうに顔を近付けたので、こちらから口を奪っておいた。

もにゅもにゅ。


「、、、ん、ふぅ、、、。

あ、そうだ。最後に颯太、勘違いしないでね?

『変な作者』は私だけど、私が書いた作品に良く似た作品を書いた『パタパタ』とかいうのは別人だから。」


「別人なんかい!」


「当たり前でしょ!

この可愛い紗奈ちゃんが、あんな羽のついた亀な訳ないでしょ!

見たことないけど。」


「うん、他の人の事、そんな風に言っちゃ駄目だよ?」

「は〜い、気を付けます。」

「よろしい。」

そう言いながら、僕らは再度、舌を合わせた。

もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。


あと、余談ではあるが、この660日後、

僕らは結婚した。

その間も紗奈の思い付きによる検証が、たくさんあった訳だけど、、、。

月並みかもしれないけれど、それはまた、別の物語、、、ということで。



おしまい

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