378日目「転生、賢者、ハーレム、やり直し、最強、聖剣……、もうやめてー!!!」
「転生、賢者、ハーレム、やり直し、最強、聖剣……、もうやめてー!!!」
ベッドの上で座り込み、スマホでカクヨムを読んでいた紗奈は唐突にそう叫んだ。
流石の僕も思わず振り返る。
「どうしたの!?」
紗奈はバンバンと僕らのベッドを叩く。
「どうしたもこうしたもないわ!
修羅羅刹の世界よ!」
僕は興奮する紗奈の隣に座ると、紗奈はスマホでカクヨムコンのランキングを見せてきた。
「あー……、そうだよねー……」
特に混乱が酷いカクヨムコン異世界ランキングの『ジャンル』だ。
「分かってた!
分かってたのよ!
むしろ分からない訳がないわ!
そして!!
これこそがカクヨムの意思なのよ!!」
「あー、つまり大賞はテンプレを選びたいと」
そもそもテンプレとランキングは異常なほど相性が良い。
いいや、ランキングのために進化したのがテンプレと言い換えても良いかもしれない。
紗奈はしきりに首を横に振る。
「いらない……
いらないのよ、テンプレは。
だって、飽きたもの……」
なかなか身も蓋もない話だ。
「だけど新規参入者にはテンプレって取っ付きやすいんだよねぇ……」
開始数話で盛り上がる箇所があり、その直後に星を入れても良いかな?という気持ちにさせやすい。
「だからカクヨムコンがテンプレランキングになるのはむしろ当然。
カクヨムは大賞をそこから選びたいということよ。
そこから数少ないテンプレ地獄を乗り越えた一握りだけが、テンプレ以外の作品として名乗りを上げるの……」
数話で盛り上げる作品が優先的にランクインしやすいランキングシステムは、紗奈が今書いているような伏線有りきの長編作品とはかなり相性が悪い。
「……正直、古豪のベテラン作者たちがエタる気持ちがよく分かるわ。
何のために書くのか、分からなくなるから」
良い作品と思っていても突然、更新を止める作品があるのを読み専からすると不思議に思っていた。
そういうことだったのだ。
「……引退するわ」
「良いんじゃない?」
無理をして書くものではない。
「紗奈が納得したなら。
納得してなくて、疲れただけなら休んで書きたくなったらまた書けば良い」
プロじゃない。
そのことはいくらでも休み、また気まぐれに書いても良いということ。
「それもそうね!」
納得したらしい。
とりあえず紗奈の頭を撫でる。
「気が向けば書くし、向かなかったら書かないわ。
ランキングに騙されるところだったわ!」
ランキングが騙すのではないけど、納得したならいいや。
そういうことで、と紗奈は両手を広げてせがむ。
僕らのテンプレは分かっている。
僕は何も言わずとも優しく紗奈の唇に自らの唇で触れ、何も言わずともお互いが舌を出して絡ませる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
もきゅきゅ。
紗奈は口を離すとペロっと自分の口の周りを舐め、口元を腕でグイッと拭く。
「書きたくなったらまた書くことにするわ」
そう言った。
僕が頷くと、今度は紗奈から口を重ねにきた。
すぐにもきゅもきゅしたくなったらしい。
僕らの口が重なる。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
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