144日目「危なかった、、、。」

「危なかった、、、。」

「危なかったね、、、。」


理科室に忘れ物をして廊下を戻っていると、理科室から出て来た紗奈に出くわし、他の人相手なら互いに避けるが、そのまま紗奈は僕の腕の中にぽすんと。


それだけならまだしも、腕の中に収まったために、そのまま口を重ねそうになり、ハッと気付いて顔を離し、思わず2人でそう言った。


理科室からの廊下は各学年の教室がある廊下と違い、当然、人は少ない。

それに救われた。


学校で近付くと、どうしてもイチャイチャだけならまだしも、反射的にもきゅもきゅまでしてしまいそうになり、そうなると際限がなくなる。


この学校は比較的歪んだ人の噂は聞かないが、それでも、その現場を見られて脅して来るような最低な存在が居ないとも限らない。

用心に越したことはない。

もちろん、そのような脅しを受ける場合は、迷わず助けを呼び警察に通報するように紗奈に話している。

それは犯罪です。

あと怪しい人には近寄らない。

これ基本。


後は単純にもきゅもきゅ現場は人に見せるようなものではありません、注意!

紗奈に対し、そういう性的なイメージを持たれるのは何より僕が嫌だ。


ちなみにまだ抱き合ったままだったので、未練はあったが鋼鉄の意思で2人で離れた。


「少し待ってて。」

そう言って僕は理科室に入ろうとするが紗奈に止められる。


「これ?」

紗奈の手には僕のノート。

要するに僕の忘れ物だ。

「それそれ。ありがとう。」

そう言って、紗奈に頭を一度だけ優しく撫でる。

そこから2人で並んで教室に戻る。


「そういえば、学校でこうやって2人で並んで歩く自体がほとんどなかったね。」

「そういえばそうだね。」

「、、、颯太、嫌がるもんね。」

僕は思わず紗奈を見る。


「、、、そんなこと、ないけど。」

「、、、そう?私の席にもあんまり寄ってこないじゃない。」

「それは、まあ。」

何を話して良いか分からないから。

何より、、、。


「、、、女性の中に割って入る勇気は僕にはないよ。」

紗奈の友達は顔馴染みでも、僕も友達と言うわけでもない。

前にカラオケに一緒に行ったから、少しは話しやすいのかもしれないけれど、陽キャと言われる人のように積極的に話しかけたりは出来ない。


「そう?」

「そうだよ。」

「2人だとあんなに色々話すのにね。」

「紗奈から話し出すことが多いけどね。」

「、、、色々聞きたいから。ダメ?」

「ダメじゃない。僕も紗奈の話は聞きたいから。

僕から話すのは少ないかもしれないけど。」

「、、、そっか。なら、色々話聞いてね?」

僕は頷く。


学校では僕らはそこまで多弁ではないかも知れない。

話したくない訳でもない。


2人で教室の入り口にまで帰って来た。

「ノートありがとう。」

「うん。」

目を見て微笑む。

紗奈もそれに応えるように、微笑んでくれた。


そうして互いの席に戻る。

戻ったら正樹に。

「、、、今、目で会話してなかったか?」

バレたが、そう?と知らない顔をしておいた。

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