143日目「颯太、私たち別れましょ?」

「颯太、私たち別れましょ?」


僕のベッドで僕と一緒に寝転びゴロゴロしていた紗奈は、僕の身体に自分の身体を擦り寄せながらスマホでネット小説を読んでいたが、唐突にそう言った。


「へ!?もがっ。」

そう言いながらも、紗奈は僕にしがみ付き離す様子は一切ない。

それどころかそれを言いながら、口を奪いにきた。

もきゅもきゅ。


「ただし!1時間だけよ!

それ以上は無理よ。」

何が1時間で何が無理なんだ?


「うん、なんのことだか全く分からない。」

仕方ないわね、と言いながら紗奈は唇を重ねてくる。


「別れるも何も紗奈が引っ付いているんだけど?」

「当たり前じゃない。離れたくないもの。」

そう言って、紗奈はチュッチュと唇を何度も重ねる。

離れずに別れる、これ如何に。


紗奈の言っていることがよく分からなかった僕はとりあえず、そのまま、口を重ねた。

もきゅもきゅ、、、。


「1時間経ってしまったわ、、、。」

紗奈は呆然と僕を見る。

うん、1時間ずっとイチャイチャし続けたけど、紗奈が何をしたかったのかは分からないまま。


「何がしたかったの?」

僕は紗奈の髪を撫でながら、いっそストレートに聞いてみた。

「付き合ってない状態でイチャイチャしてみたかったの。」


「付き合ってない状態でイチャイチャは、、、ああ、ラブコメならよくしてるね。」

「そうね、でも別れている間に泥棒猫に颯太がさらわれたら大変だから、しがみついて逃げないようにしてから1時間だけ別れてみたの。」

「それ、別れてないよね?」

「残念だけど、私が譲れるギリギリはそこまでよ?

あと危険過ぎるから、もうダメね。」

何がどう危険かはともかく。


そうして紗奈は僕にしがみ付いたまま、スマホでネット小説を読むことを再開した。


「あ、そういえば颯太。」

「どうした?」

「久しぶりに前に書いた小説を見直したら、色々と酷かったわ。

書いてた当時は気にならなかったのに、句読点が変な位置に来てたり、、、すぐに直したわ。」

「あー、そういうもんなんだね。」

「そういうものよ。」


そうして、紗奈はまたスマホでネット小説を読むことを再開した。

いつもこんな感じである。


「あ、そうだ紗奈。」

「なぁに?」

紗奈が顔を上げ、こちらを見る。

僕は紗奈の手を取り、紗奈のスマホを取り上げ枕元の棚に置く。

「はれ?」

とヨリを戻したから、仲直りに頂きます。」


僕ら一旦、別れていたらしいから、2度と離さないように教え込まないと。

目をパチクリする紗奈を抱きしめ、そのまま口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。

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