142日目「『イチャイチャ幼馴染』を小説風にアレンジしてみたいのだけど。」

「『イチャイチャ幼馴染』を小説風にアレンジしてみたいのだけど。」


自分の部屋から持って来たちゃぶ台に顎を乗せて、スマホでネット小説を読んでいた紗奈はポツリとそう言った。

ちゃぶ台の向かいには、たぬきのポン太君が鎮座して居られる。


僕は紗奈に当たらないように、ゆっくり椅子を回転させる。


「してみたいけど?」

「、、、颯太を主人公にすると、出だしがコメディじゃないのよ。」


僕はなんと言って良いか分からずモニュモニュした気分だ。


「ほら、同棲初日に『私、彼氏出来た』と言った時にどうしても、颯太がシリアスなのよ。

イチャイチャ確定なのに。」

「同棲じゃなくて、同居ね。

、、、それはあんな話をされたら。

よくある幼馴染お別れパターンだからね。」


「今後は間違っても勘違いしちゃダメよ?

ミーの彼氏、永遠にユー。

分かった?」

「もう流石に分かったよ。

ミーの彼女も、永遠にユーだから。」

お手上げというように肩をすくめる。


紗奈はニヒヒと笑う。

「分かってるなら良いわ。

とにかく最初の付き合う前のことを掘り進めると、どうしてもラブコメじゃないのよね、、、。

恋の切なさが全面に出て辛くなるのよ、私が。」

「紗奈が悲しくなるんだ?」

「それはそうよ!

小説でジレジレは良いけど、自分がジレジレするのは怖いじゃない!

現実は何かあってからでは遅いのよ!」


まあ、それもそうだ。

そうならないために日々努力が必要なのである。


「それなら紗奈が主人公ではダメなの?」

「私を主人公にしたらカ◯ヨ◯的にラブコメじゃなくて、恋愛になってしまうじゃない!

私はラブコメを書きたいの!」

「そうなんだ。

だったら、ジャンルは恋愛にして、タグにコメディと入れたらどう?

ラブコメではなくコメディ。

そしたらタグを見た人が分かるんじゃない?」


紗奈はハッと気付いたように顔を上げる。

「天才か!?」

うん、まあ、悪い気はしないけど。

「喜んでもらえて何よりだ。

なら、ご褒美もらって良いかな?」


紗奈はキョトンと可愛らしく僕を見て、小首を傾げる。

「ご褒美?」

「そう、ご褒美。いつもの。」

あー、と紗奈。

「颯太って、もきゅもきゅ好きだよね、、、。」

まあ、、、。

「、、、いつまでもし続けると思う。」

「2、3年もしたら飽きたりしない?」


僕は少しだけ目を逸らす。

「20年以上は確実にし続ける自信がある。」

かなり確信に近い自信だ。

「、、、リアルな年月をいう辺り、本気を感じるわね。

、、、そんな好きなんだ。」

まあ、うん。


「、、、しょうがないな。

おいで。」

紗奈が手を広げるので、僕は椅子から降りて、紗奈を抱きしめ、紗奈の口に自分の口を重ねる。

もきゅもきゅもきゅもきゅ。

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