141日目「昨日は予想に反してイチャイチャしてしまったわ。」

「昨日は予想に反してイチャイチャしてしまったわ。」


僕のベッドで僕と一緒に朝からゴロゴロしていた紗奈は、僕の身体に自分の身体を擦り寄せながらスマホでネット小説を読んでいたが、唐突にそう言った。


「、、、昨日?」

では、現在、僕らの状態をなんと言うのだろう?

「今日は雨だから仕方ないのよ。」

そう言いながら、紗奈は僕の腕の中に潜り込むように入り込む。

素直に嬉しい。


「こんな雨の日に外に出なくて良いのは最高だね。」

外は雨の音がしている。

その音がたまらなく静かな気持ちになり、ベッドに転がっていると眠くなって来る。


部活動をしている訳じゃないから出来ている芸当だが、日々しっかりと色々と努力しないと手痛いしっぺ返しがいつか来てしまうので気を付けよう。


紗奈がさらにスリスリとするので、ギュッと抱き締めておく。


「、、、それで昨日言ってた内容はなんだったの?」

「昨日、、、?」

忘れたのか。


ぽけーっとした顔が、可愛いので危険だ。

もちろん僕はクールだ。

大丈夫、大丈夫、、、。


少しずつ紗奈の方に顔を近付けていると、紗奈が飛び起きた。

「思い出した!

小説のネタを考えたの!」

ガックリしながら、狼颯太は暫しステイ。

「どんな小説?」

「う〜んとね、失恋の話。」


「紗奈がそういうの考えるの珍しいね?」

「そうね。

上手くハッピーエンドに繋げたいとは思うけど、失恋もまた恋の一つだから。」

それもそうだね、と僕は頷く。


失恋は悲しいけれど、かといって、失恋の全てが不幸な訳ではない。

新しい始まりでもあるのだ。

「私なんかは書く時も読む時も、その世界に入り込んじゃうから不幸な話なら遠慮したいけれど、恋の切なさの中にはそう言った失恋の要素とかあると思うの。

題名は『正しい恋の殺し方』。」

「なかなか衝撃的なタイトルだね、、、。」

恋を殺すか、、、失恋というものをどう捉えるか、だね。


「まだ書いてないけれどね。

失恋と言いながら、私の場合、油断すると失恋した相手と結ばれちゃう話になっちゃうから。

そういうこと考えてると、違う内容書いちゃった。」

「違う内容?」

「うん、『イチャイチャ幼馴染』を小説風にアレンジしたの。」


「うん、紗奈。

『イチャイチャ幼馴染』は曲がりなりにも小説じゃなかったのかなぁ〜?」

紗奈のほっぺをつまみながら伸ばす。

これはオシオキが必要かなぁ〜?

ほっぺが柔らかい。


「ひはうの!(違うの!)、普段のは『日常系』、小説系は流れがあって全体が完成して初めて完成なの!通して読む物なの!」

ああ、基本的な小説スタイルね。


「第1話を書いてみたら、颯太が失恋してるように見えなくもないのよ!」

「あー、あの『私、彼氏出来た。』の時か。」

たしかにショックだったけど、すぐにネタバラシされたね。


「颯太ぁ〜、私、彼氏出来たぁー。」

そう言いながら、紗奈は飛び付くようにまたしがみ付く。

「そうだね、彼氏出来たね。僕も彼女が出来たよ。」

紗奈の頭を撫でる。


「えへへ〜。颯太は生涯私以外の彼女は出来ない呪いをかけてやるわ〜。」

「そうか、そうか、ありがとう。」

それは呪いではなく、祝福というのだ。

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