第29話「今日はとんでもなく危険な日です」

「今日はとんでもなく危険な日です」


手にスマホを持って、僕を背もたれにして後ろを振り向くようにしながら紗奈は唐突にそう言った。


とにかく紗奈の背中越しに、そのまま口を重ねる。

もきゅもきゅ。


口を離し、数度唇を啄み僕は言う。


「そう思うのなら今日はもきゅもきゅ幼馴染を更新しないように」



なにが危険って?

書くと黒歴史の上塗りが行われることだ。

多くは語らないが、ちょっとイチャイチャが止まらなくなっているのだ。


これはヤバい!

2人でそう思っているが、あえて口には出さない。


理由は簡単だ。

言葉というのは不思議なもので、その一言を出した時点で僕らはもうアクセルを踏み切るのだ。


ヤバいからもういいやって。


それだけ僕らはいま互いへの感情でギリギリだ。


「わかってる、わかってるんだけどね?

作品が呼んでいるのよ」


「もきゅもきゅ幼馴染は晒している日記なだけだよね?」

「それは言ってはいけない約束よ!」

そう言って完全に振り向き、しがみ付くようにしながら紗奈は口を重ねる。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


口を離しても、紗奈は回した腕を離さずしがみ付いてきたまま。

背中に腕を回し、そこからスマホでぽちぽち。


晒し日記を書いているようだ。

そこまでして書くか?


そう思いつつ紗奈の頭を撫でる。


「なんというかイチャイチャってどうやって止めるんだっけ?」

「さあ?」

僕も紗奈の頬にキスをすると、紗奈から唇にキスをしてくる。


この土日はずっとこんな感じだ。

「……というか、もきゅもきゅで抑えられるか自信がないわ。

正直、昨日からというか、ここ最近は毎日もきゅもきゅ以上の……」

「すとっぷ、紗奈ストップ」


「あっ、危ない危ない」

紗奈はそう言いつつ口を重ねてくる。

もきゅもきゅ。


危ないというかすでにアウトな気もする。


紗奈は僕にしがみ付いたまま、諦めたように手に持っていたスマホを枕の上の棚に置いて

「諦めたわ」


なにを諦めたのだろう、きっと書くことをだろう。

……いいや、言葉にしないことを、だ。


「颯太、愛してる」

そう言って紗奈は口を重ねる。

もきゅもきゅ。

ここからは口を離しても、紗奈も離れようとしない。


僕?

逃さないように紗奈の身体を最初から支えているよ?


「愛してるよ、紗奈」

「んっ、私も」


口を重ねながら、身体に……特にお腹に負担が掛からないように優しく紗奈を転がす。

紗奈も僕の誘導に逆らうことなくそれに従い、再度僕らは口を重ね繋がっていく。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。

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