637日目(残り93日)「ラブコメってファンタジーなのよ」

「ラブコメってファンタジーなのよ」


ベッドの上で紗奈と一緒に寝っ転がりながら、スマホでカクヨムを見ていると紗奈が唐突にそう言った。


「前に同じ話しなかった?」

「したわね」

2人で例の日記と化しているアレを読み返す。


合間にもきゅもきゅしながら。

もきゅもきゅ。


「ああ、あった。

177日目だね。

こうしてみると随分経ったなぁ〜」

「そうね、いよいよ私たちが法律上でも夫婦になる日が近づいて来たわね」

そう言って、ンフフーと笑うので口を重ねておいた。


もきゅもきゅ。


「んー、でも全部が全部ファンタジーってわけでもないよね?」

「そうね、私たちみたいにそのままを公開していることもあるわけだし」


もう今更言わないけれど、僕らのことを晒しすぎだ。

こんなふうに以前話した内容を日記のように確認出来るけど。


「人気なラブコメは特にファンタジーよね。

私はどちらかと言えば、恋愛タグ系のラブコメの方が好きだからファンタジーラブコメはちょっと苦手ね」


「……そのファンタジーラブコメは、ハーレムとかのことだよね?

異世界ファンタジーの意味じゃなくて」


「そそ。

颯太も思ったことあるでしょ?

この人たちドタバタして最後に告白して付き合って終わったけど、すぐ破局しそうだなぁとか」


「……あるね」

現実に置き換えると、課題が多過ぎるままハッピーエンドを迎えているのだ。

恋が愛に至るにはまだ長い道のりが必要だ。


その分の精神的成長が全く見られない主人公は、その手のラブコメにはよく見かける。


「例えば私とかは転生とかチートとか聞くだけで、んんん?と設定自体に疑問が出て物語にのめり込めなくなるけど、物語を楽しむにはそれはそれとして、と気にしないようにすれば、面白く読めるはずなのよ」


まあ、そこまでして読みたいかどうかは、また別の話だろうけど。

中には本当に面白いものもある。


「そういう違和感部分を持ってる作品は、ラブコメでも人気が出やすいわ。

私が読みたいものではないけど」


「なるほどね。まあ確かに最近はかなり減ったけど、ナンパから助けたら次の日には惚れられてたり、なんの根拠もなくなぜか色んな女の子からモテたり……はまだあるかな。


多くのラブコメの終着点となっている好きです、では付き合いましょう、は終わりではなく始まりにしか過ぎないことを、どこまで含んだ話になっているかは気になるね」


「そうね。

たまにそういう話の主人公とヒロインの関係は現実にはかなりの苦難が待ち受けているのが、簡単に想像つくわ。

しかも乗り越えられなさそう。

どちらかが浮気するか、普通に別れるか。


ただし……ラブコメをファンタジーで見るなら、その辺りの現実味を表現しちゃうと、ラブコメでランクインは難しくなるわ。


もうラブコメファンタジーというジャンルこそが今のラブコメタグなのかもしれないわ」


「……なんと、ここに来てラブコメタグの問題の答えを導き出したか」


「まあ、適当に言ってるだけだけど」

「そうだね、寝よっか」

僕らは口を重ねてから、電気を消して横になる。

つまり、おやすみのもきゅもきゅをした。


もきゅもきゅ。

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