119日目「別れる時のラブコメって、そこだけリアルよね。」

「別れる時のラブコメって、そこだけリアルよね。」


僕のベッドの上で僕の足の間に入り、僕の首に両腕を回し、しがみ付きながらスマホで小説を読んでいた紗奈さなは、唐突にそう言った。


要するにしがみ付いてる。


最近分かったけど、ネガティブな話をする時、紗奈は僕に引っ付いていることが多い。

要するに不安があるらしい。


僕は紗奈が見ていたスマホのネット小説を覗き込む。


「、、、ああ、好き同士なんだけど、相手が浮気したと思ったからとか、些細な言い合いで喧嘩になったりとか。


結局、最初のラブラブしてた時ならそこから和解出来ただろうに、つい自分の今の気持ちが分からなくなって、別れましょうと言ってしまう、そんなよくある話だね。」


「夫婦でも良くある喧嘩パターンね。

ある夫婦はそんな時、合言葉を決めてたりするらしいわね、幸せになるために!とか。」


テレビでやってたね。


「そこで!!私たちも合言葉、いいえ、あえて合図を決めましょう。」


ふむふむ、それは良い考えかもしれない。

僕は同意する。


「私たちの合図は、これよ。」

そう言って、紗奈は僕の口に吸い付く。


もきゅもきゅ、もきゅもきゅ、もう一つ、もきゅもきゅ。


紗奈は離れる時にわざと、ちゅぽっとリップ音を鳴らす。


いつもしてるのに、何故か紗奈は顔が赤い。

リップ音で正気に戻ってしまったらしい。


「まあ、そうだよね。」

紗奈の髪に触れ、僕から唇を重ねる。


「そうよ!例え、私から何かの間違いで『嫌い』とか言っても何かの間違いだからね!」


紗奈の髪を優しく撫で、僕は目を細める。


「そうだね、結局のところ、多くのカップルが別れる理由は色んな意味で相手を『信じられるか』だからね。

信じるよ。」


「そうよ!ネガティブな言葉は一時の勢いだけだから、絶対に信じちゃダメよ!!」


この間、紗奈はずっと僕にしがみ付いているので、見つめ合ったままで、実は僕もちょっと顔が赤い。

それに紗奈があったかいし柔らかいし、、、。


「だからね、颯太、練習よ!」

また口をガバちょと重ねる。


もきゅもきゅ、、、。

「別れ、んっつ、ましょ、はむ。」

もきゅもきゅ。

もきゅもきゅもきゅもきゅ。

もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。


口を離し、2人で息を吐く。


「絶対に別れてやらないから。」

「そうだね。」

紗奈の口元を指で拭いてあげ、優しく唇を重ねる。


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