「書くのが怖くなっているのよねぇ〜」

「書くのが怖くなっているのよねぇ〜」


ベッドで足をバタバタさせながら、紗奈は唐突にそう言った。

「どういうこと?」

尋ねながら、僕は紗奈と唇を重ねる。

「んむっ……」

もっきゅもっきゅもっきゅもきゅ。


今日は姫奈は下の両親のところにお泊まりだ。

そんなわけで今日はイチャイチャしっぱなしだったことは秘密だ。


それはともかく。


「小説はボクシングをするが如しよ〜」

軽くチュッとリップ音をさせてキスをした後、紗奈はそう言う。


前々から言っている話ではあるが、小説を書くには魂のエネルギーがいるそうだ。

なので気力体力が充実していないと書けない。


ボロボロになっても、書く気力がなくても書かないといけないのがプロだが、そうではない人はその絶望の中で書く必要はない。


ここ最近……結局、一年ほどは紗奈の余裕はなかった。

肉体的余裕よりも精神的余裕がむしろなかった。


紗奈曰く、運気が下がって気力が上がらない時に入っているからそれは仕方がないんだとか。


とにかく書くのには気力がいると言う話だ。


紗奈はちょっと元気になったのか、身体を起こしていつもの通りにベッドをバフバフさせて不満を訴える。


「そんなわけで書いてないと、なんというか文章が自然と落ちてこないし、トランス状態にもならないし、応援コメントもないしで悪循環に陥るわけよ!」


「うーん、それは地道に慣らして回復するしかないんじゃない? それにまだ紗奈は回復し切ってないでしょ?」


ようやく姫奈の夜泣きが収まり始めているが、まだ寝れない日は多い。

どうしても体力は回復しないのだ。

そういうときは無理をしてもどうにもならないものだ。


「そうなのよねぇ〜」

パタンと紗奈はまたベッドの横になる。


書いていない僕にはよくわからないことだが、書き手には書き手なりの何かがあるんだろうと思う。


「ま、のんびりやるしかないよねぇ〜。カクヨムでも長く描き続ける人はそれほど多くないけれど、その気持ちもよくわかるわねぇー」


紗奈の隣に一緒にころんと転がり、その頭を撫でる。

それでも紗奈はまだ書くらしい。

無理しないようにとは思うが、どこまでが無理でどこまでが無理じゃないか、紗奈にもよくわからないらしい。


とりあえず書きたいから書く。

それが続く限りは書くつもりのようだ。


とりあえず。


特に前置きもなく僕らは再度口を重ねた。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。

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