「正直、こうやって人は筆を折るんだと思う」

「正直、こうやって人は筆を折るんだと思う」


ほふーとため息をついて、紗奈はスマホでカクヨムを見ながらベッドに寝そべり、唐突にそう言った。


筆を折る……つまり書くのをやめるということ。


「こうやって、とは?」

どこかアンニュイな表情を見せて紗奈はコロンコロンと転がって僕に体当たり。

そのままグデーと僕にしなだれかかる。


とりあえず近くに来たので、紗奈の口に口を重ねた。

「もぎゅ!?」


油断していたらしい紗奈は驚いて目を見開くが、唇で紗奈の口を開かせ、その中にある舌を僕の舌で絡めると大人しくなったので、僕はその紗奈の舌の感触を存分に味わう。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。


口を離すと透明な橋がかかり、紗奈がトロンとした目をしたけれどクールダウンをかねて、唇を数度重ねるだけにとどめる。


その後、グデーンとしつつも紗奈は僕の問いに答える。

「なんというか……書く気がしないというか。読んでもらえる数が減ってくると力が出なくなる、そういう書き手アルアルなのよ」


「承認欲求ってやつだね」


でもまあ、それは仕方がない。

前々から言われているようにカクヨムでは一度沈んだ話は浮上はほぼしない。


書籍化されたプロの作品でも、突発的に流行ってランキング入りしたものには星は遠く及ばないのだ。


それに一喜一憂しても仕方がないのだが。

それでもその養分を吸い取って戦う書き手には、その反応の薄さは致命的にもなり得る。


「悪循環〜」

それを脱するには書いて、更新して、存在をアピールするしかない。

しかし、その力はなかなか湧かないのだ。


もちろん、紗奈曰くもきゅもきゅ幼馴染は別腹だそうだ。

これは僕らの日常なので、それとは違う次元なのだと。


そう言いつつ、紗奈は僕に催促するように口を突き出す。


もはや晒すのはやめようとは言っても仕方がない。

もはや何十万字と続いてしまっているのだから。


そうして、再度。

紗奈の口に口を重ねた。

もきゅもきゅ。

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