19日目「紗奈、好きだよ。」

紗奈さながいつものように僕の部屋に入って来た時、僕はベッドに寝転んでいた。


紗奈はいつもお風呂から上がり、お肌の手入れをして、寝る準備を整えてから僕の部屋にやって来る。


颯太ふうた、どうしたの?珍しいね?」

紗奈はいつものように、僕のベッドに腰掛ける。


僕は身体を起こし、紗奈の手を取り彼女の目を見て言った。


「紗奈、好きだよ。」

「ふえ!?」


ゆっくりと彼女の反応を確かめながら、紗奈を包むように軽く抱き締める。


「紗奈はどう?」

「わ、わた、私も、す、き、好き。」

「そう、、、。」


僕は少しだけ目を閉じて、心を落ち着かせる。

心臓の音がドクドクとする。


「ふ、颯太、どうしたの、、、?」


紗奈の戸惑いを感じる。


ゴールの話をしてから、何度も考えた。

何度考えても出てくる答えは一緒だった。


「紗奈。」

「何?颯太。」

「紗奈を頂戴。」


ふえ!?と紗奈が、さっきよりも大きく動揺する。

「落ち着いて、、、大きく息を吸って。」


動揺しながら、紗奈が大きく息を吸う。

「吐いて。」


紗奈は言われるがまま、すう〜と吐いて、はぁとまた息を吸った。


心臓の音は互いの、バクバクとした音が、紗奈の柔らかさと温かさと共に感じられる。


思えば、子供の頃を除けば、こうして紗奈を抱き締めるのは初めてだった。一緒に眠った時も、せいぜい手を繋いだだけだった。


「慌てないで?心の準備が出来るまで、慌てなくていいから。」


僕は優しく呼びかけて微笑み、紗奈の手を取り、その目を柔らかく見つめた。


「何度も考えた。でも、紗奈を愛しいと思えば、思うほど、一緒に、ずっと居たいと思えば思うほど、紗奈を抱きたいと思った。」


繋いだ手に視線を落とす。


「夜にこうして一緒に居て、、、良くある幼馴染や小説にあるように、想いを伝えて、穏やかに時を過ごせば、いつかこの関係を愛と呼べるようになると、そう思ってた。


、、、でも違った。


愛しさが募れば募るほど、紗奈を抱かないのは、おかしいと思うほどになった。」


良くある同棲物や部屋で共に過ごす、そんな関係に憧れはあった。

事実、僕らはそれを経験した。


だけど。


「だけど、結婚して、将来を一緒に過ごす、それを願う時、この恋を愛と呼びたい時、身体の関係無しでは居られない。


もし、それで居られるのだとしたら、、、。


、、、それは男の方が、まだ本気ではない証拠だ、と思う、、、多分。」


同じ男でも他の人の本音が全て分かるわけではないので、少し言い切るには抵抗がある。


、、、ただ、僕は、言い切れてしまう。


「僕は紗奈と結婚して、ずっと一緒に、、、。」

少し躊躇ためらう。


覚悟を決め、紗奈の目を見る。

紗奈は、僕の目から目を逸らしたりはしていない。


「いつか、紗奈には僕の子供を産んで欲しいと思っている。


、、、だから、一緒に居て欲しい。」


紗奈は真っ赤な顔をして、それでも、嬉しそうに笑って、、、頷いた。


僕は、彼女に口付けし、その身体を横たえ、、、僕らは互いの両手を恋人繋ぎをして。


初めて結ばれた。


それは僕らが、幼馴染の恋人同士になった証だった。






次の日、食卓には赤飯が並び、僕と紗奈は、ニコニコする両親の顔が見れず、無言で食事をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る