第60話「心が渇くのよ!」
「心が渇くのよ!」
先程までスマホでカクヨムを見ていた紗奈が唐突にベッドの上でぽふぽふとベッドを叩く。
「いつも通り読む物がない感じ?」
「その通りよ!
心に潤いを持たせて、魂エネルギーを充填させてあの話やあの話やあの話の続きを書こうと思ったら、心が乾いて書けないのよ」
むふーと紗奈は不満げに唸る。
紗奈は面白い作品を読むことでエネルギーを貯める面白モンスターなのである。
「良い作品を読むと、私もこういうの書きたいといい感じの気分になれるの。
……その反対に、これはアカン、アカンのよと思う作品を見るとごっそり魂エネルギーを奪われるの。
面白くないわけじゃなくて。合わないだけなんだけど、それでも魂エネルギーを奪われるの。
ましてやそれがランキング上位だったりすると、私ってなんで書いているんだっけ?と自らの存在を問いたくなってしまうの……ぐはっ!」
そう言って紗奈はベッドに倒れる。
合う合わないは人それぞれ。
特に紗奈は書いている人なせいか、こだわりが強く流行り物が合わないので致命的だ。
何故ならカクヨムは流行り物を推しているために、ランキングには流行り物が多くなる傾向にある。
カクヨムコンの募集文にもそのことは触れてある。
反対に既成概念を超えた、もしくは重厚な世界観は人気が出るには時間がかかる。
そして、それはカクヨムでは目立ちづらい。
紗奈が突発的に、『あくまで紗奈が』心躍る作品を読みたくて、ランキング作品をぽちぽちと読んでも、こうなるだけなのだ。
「あれ?紗奈、毎回定期的に同じこと繰り返してない?」
この光景、何回も見たぞ?
「……人はね、颯太。
過ちを繰り返すものなの。
たとえば2日酔いになってもお酒をまた飲んじゃうように、ギャンブルを繰り返すように、カクヨムランキング作品を読んでしまうように」
カクヨムランキング作品を読むことは別に悪いことではないので、その中に一律にするのもどうかと思う。
お酒も深酒しなければまあ……。
もちろん成人後の話。
「とにかく……颯太エネルギーを補給よ」
ゾンビのように僕にしなだれかかり、紗奈は僕に唇を重ねる。
もちろんそこから舌も重ねて、もきゅもきゅと補給が開始される。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
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