「うーん……」

「うーん……」


ベッドに紗奈と一緒に転がってスマホでカクヨムを見ていた僕は思わず、そう唸った。


「颯太、唐突に唸ってどうしたの?」

いつもとは逆に紗奈がそう僕に尋ねた。


「いや、このラブコメの王道がどうにも気に食わなくてね……」

それはとあるラブコメのワンシーンだ。


誤解しないでもらいたいが、そこまでずっと面白いラブコメなのだ。

温かな関係をゆっくりとジレジレイチャイチャと育てて。


だがしかし!


紗奈は僕が見せたラブコメのその部分を読む。

「ふむふむ……、あー、王道のジレジレラブコメのテンプレパターンねぇー。前に颯太言ってたもんねぇ」

そう、大人気なラブコメほどこのパターンの展開が必ずと言っていいほどにあるワンシーン。


それは……。

同じ部屋で過ごし、ジレジレとした関係を続けながら仲を深めていった男女の女の子の方が家庭環境のことや、辛い過去を語るワンシーン。


そのワンシーンで『一見』、男の子の方は女の子の心に寄り添うように優しい言葉をかけるのだ。

そして大半の場合、抱きしめ合う。


……だが、ちょっと待て。

繰り返そう。


そこで男の子は女の子に寄り添う『ような』言葉をかけるのだ。

そして99%、告白はしない。


ヘタレたり、女の子の気持ちがわからないからとか、今はとにかく寄り添うべきだとか『言い訳』しながら。


「うがー\( ゚д゚)/」

僕は思わず両手を挙げて唸る。


「それってつまり、相手よりも自分の気持ちが大事と言ってるのと一緒やないかい!!」


「肝心なときに肝心な言葉や行動に示さない男、控えめに言ってダメよねぇー。大切な言葉はちゃんと相手に伝えないとねー、もしくは行動」


好きの言葉もそうだし、相手と肉体関係を持つこともそうだ。

エロ方面に突き抜ける話が多いせいで、誤解も生じやすいが心と身体は無関係ではない。

愛する人と愛し合う。


これはとても大切だし、本気でその人との人生の責任を持つつもりなら、相手と関係を持たないという選択肢はない。


「ラブコメは仕方ないかもねぇー。そこを踏み込むならジャンルは恋愛になるのかもね。ラブコメでそこを踏み込むと話終わっちゃうもんねー」


紗奈はあははと笑う。

もう何度も紗奈が訴えてきた部分でもある。


僕も紗奈も、そこで相手に誠意を見せてハッキリと告白するタイプの人の話の方が好きだが、こと『ラブコメというジャンルにおいての』正解は告白しないだ。


そういうものの方が書籍化されるし、アニメにもなる。

現実的にどうかは関係がない。


ゆえに……。


「まーねー、ラブコメの王道だから、そういうものとして読むしかないのよねぇ〜。転生と一緒ね」


「ぐぬぬ……」


いつも紗奈が訴えているのと反対に今日は僕がぐったりと倒れる。

そのワンシーンまでずっと面白いと思っただけにちょっと消化できない。


結局のところ、これは好みの問題ではあるけれどこれとは違う形で僕が紗奈を大切にしようと思うがゆえに、相容れない考え方だ。


なぜか紗奈は嬉しそうな顔で転がりながら僕に引っ付いた。

「はいはい、今日は私が颯太を慰めてあげるから……んっ」


そう言って紗奈は僕にちゅっと口付けをしてくれる。


なので僕は遠慮なくそのまま紗奈の口に口を重ねた。

「んっぐっ!?」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


「颯太っ!? 長っつ、んっぐっ」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。

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