5日目「私、浮気したわ。」

「私、浮気したわ。」


僕のベッドの上で、身体を伸ばしながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


漢文を解いていた僕は、一瞬だけピクリと反応してしまったが、直ぐに、ふ〜ん、とだけ返事をする。


「う・わ・き・したの。」

と言いながら、紗奈は僕の枕をバフバフとする。


ホコリが立つから止めて?

子曰、、、。


「キス付けるわよ?」


マークを抜くな、マークを。

あれ?そっちの方がマシなのかな?


それでも仕方なく僕は椅子をぐる〜り、と回転させる。


「それで?何に対して浮気したの?」

「カ◯ヨ◯に対して。」


オウノー!


僕は両手を広げ、天を仰いだ。

それは重大な浮気だ。


「何で浮気したの?」

「何でだろ?他が魅力的に見えたから?」


うんうんと僕は頷く。

「人との浮気でも、そんな理由も多いんじゃないかな?何でだろ?みたいな感じ。」


う〜ん、とそのままベッドに転がりながら紗奈は考える。

スカートだから、見えないように気をつけな?


「でもさあ、浮気したのに復縁したいって言うパターン多いよねぇ?バレたんだから諦めたら?と思うけど。それでもしたくなるのかな?相手が大事じゃないの?」


僕も腕を組み悩む。

想定でしかないけれど。


「突発的に浮気したくなるのかも?例えば、相手と喧嘩して、向こうが悪いの!っていう気分になるとか。」


僕の想定にまだ悩みながらも、紗奈は相槌をうつ。

「う〜ん、そっか、一時的に相手が嫌になった心の隙間にかぁ。」


「実際、その心の隙間に、相手が望む都合の良い言葉で、浮気させようとする悪い人もいっぱい居るから気を付けないといけないよ。


例えば、君は悪くないよ、相手が悪いんだから、『少し』反省させた方が良いとか言って、人の居ないところに連れて行かれて雰囲気に酔わして、とかね。」


紗奈がそれを聞いて、ジト目をする。

「よく分かるね?試したことあるの?」


「ないよ?それだけ簡単な言葉でも心の隙間がある時は危ないよ、と言ってるだけだよ。

そして、一度経験してしまえば、浮気したことのない人よりも浮気しやすくなってしまうね。

ほら、お肉の例と一緒。」


あー、と紗奈は身体を起こして納得する。


「分かる分かる、私もずっとキスマーク付けたくて仕方ないもの。アレは失敗だったわ。ちょっと止まらないかも、、、。」

ペロリと舌を出して、口の周りを舐める。


見てて恥ずかしくなったから、目を逸らしてしまう。

ガタッと紗奈がベッドから降りようとする。


マズイ、と思い、次の話に繋げる。


「そんな訳で復縁というのは、なかなか難しいだろうね。よっぽど自分を律することが出来るようにならないと。」

紗奈は目をパチクリして、また腕を組んで悩む。


「う〜ん、私の場合、浮気をされたら颯太と一緒に死ぬから、復縁自体があり得ないわ。」


何故、僕を巻き込む。

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