675日目(残り55日)「テンプレか否か、世界はそれで二分されるわ」
「テンプレか否か、世界はそれで二分されるわ」
紗奈にベッドに引きづり込まれると同時に紗奈は唐突にそう言った。
「ネット小説は改めて言われるとそうかもね」
「でしょー、でしょー!」
紗奈が嬉しそうなので、しがみ付かれて身動きは取れないけど、紗奈の頭を撫でておいた。
「昨日、勉強をサボって令嬢物の漫画を読みまくっていたのよ」
「ああ、うん」
勉強はどうだとかはとりあえず置いておこう。
「するとね、無意識なんだけど次から次へと令嬢物を漁ってしまったの。
中には明らかに別の人が書いているのに、全く同じストーリーが幾つもあったわ。
でも全く気にならないの。
読む物がなくなって気付いたわ。
これがテンプレの意味なのね、と」
「きっちり読み切ってようやく気付いたんだね?
最後に気付けて良かったというべきか」
紗奈は僕にしがみ付き、恐ろしい真実を語るかのように告げた。
「……気付いてしまったわ。
令嬢物なら、私は漫画になる前の原作者が誰であろうとどうでも良いんだと。
原作者で唯一憶えているのは、中◯◯◯先生だけよ。
あの先生の文体好きなのよ。
他はビックリするぐらい憶えていないし……」
そこで紗奈は言葉を溜めて……。
「……悪いけど、覚える気もないわ」
「なかなか衝撃的なことを言うね」
「そうね。
でも言葉にしたから衝撃的なのであって、ずっと前から無意識にそうしてたのよ。
カクヨムとか原作小説で読む時は原作そのものを読むから、そうはならないけれど……」
「……そうか、だからファンタジー系もテンプレ」
「そうね、あんな感じに次から次へと求めてしまうからテンプレは売れるのよ。
その反対にテンプレ外はその紐付けがないから、どれほど面白くても読まれる可能性がグッと減る。
テンプレが書籍化するわけね……。
確かに出版業界もテンプレを優先的に選ぶわけよ、連鎖反応で売れるもの……」
紗奈は無意味に天井を見る。
なんとなくいい風に持っていきたいのだろうけど、きっと間違いなく、大した意味はない。
「書籍化したいならテンプレ……。
好きなものを書きたいなら、書籍化を諦める。
作者たちは初めから選択を強いられていたのね。
ようやく心から理解出来たわ。
ルールールー♪」
とりあえず紗奈の頭を撫でておいた。
「……というわけで!
今日も刺激的に行くわよ!!」
\( ゚д゚)/←こんな感じで紗奈は僕に再度、しがみ付く。
「はい、舌出して〜」
そう言いながら紗奈はその綺麗な舌を見せるので、僕も言われるがままに舌を出す。
その舌に触れるぐらいの感じで紗奈は舌を重ねて、ペロッと舐める。
「……美味しいわね。
美味しいと感じるのがどうなんだろうと思っちゃうけど、美味しいのよ」
そうだね、どうだろうとは思うけど……今更だ。
僕らは柔らかな感触を確かめるように唇を重ね、舌も重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
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