175日目「ラブコメの付き合う前のイチャ付きの方が良く見えるのは何故かしら?」

「ラブコメの付き合う前のイチャ付きの方が良く見えるのは何故かしら?」


リビングのソファーでコロンと僕の太ももを枕にしながら、スマホでネット小説を読んでいた紗奈が唐突にそう言った。


上から紗奈の顔を真っ直ぐに見ることになり、視線が紗奈のピンク色の口元に行ってしまう。


紗奈がスマホで自分の口元を隠すし、目を細め僕をじっと見る。

少しその頬は赤い。

「、、、颯太、見過ぎ。」

「、、、仕方ないことなんだ。」

可愛い、、、じゃなくて気付かれた。

視線はよく分かるようだ。


部屋ならば、そのまま口を奪っていただろう。

まあ、それがあまりに多くなってしまったからリビングに居るようにした訳だけど。


代わりにではないけれど、紗奈の頭を撫でる。

両親はリビングに居ないけど、いつ戻ってきてもおかしくない。


どうして我慢してまでも、リビングに居るのか自分でも分からなくなりそうだ。


意識を口元から逃すため、紗奈の話に乗る。

「どうだろうね。見ている分には、近付くかどうかのラインを攻める方が想像が働いてより、、、その、キュンキュンしやすいからじゃないか?

カップル同士だとしようと思えば、、、キスも出来る訳だから。」


紗奈は口元をスマホで隠したまま、僕をジーッと見ながら。

「そうね。やっぱり、触れるか触れないかのドキドキが胸キュンなのかも、、、。

当人からしてみれば、付き合った後のイチャイチャの方がとんでもなく幸せなんだけどね。」


「何か読んだのか?」

紗奈はお気に入りのネット小説を見つけるとその話をよくしてくる。

「うん、イチャイチャラブコメ増えたよね。

やっぱりざまぁよりもよっぽど良いね。

、、、、ただ、イチャイチャしているのに、もきゅもきゅはしてないの。

何故かしら、、、?」


「もきゅもきゅは過激過ぎなのと、もきゅもきゅなんて言葉ないからね。」

「そう?ドカーンとかキンキンとかチュっとかウチューとかぺろっとかと同じ擬音語だから、あってもいいと思うんだけどなぁ〜。」


紗奈はスマホを持ち上げ、目線をスマホに。

そうなると口元が俺から見えるようになる訳で、、、。


リビング内をキョロキョロと。

両親が入って来ていないかと、、、。


目線を紗奈に戻すと口元をまたスマホで隠し、今度は先程より赤い顔で、はっきりとジト目で僕を見つめていた。


「、、、だめよ?」

なので、僕はストレートに聞く。

「だめ?」


紗奈が呆れるように大きくため息を吐く。

「、、、リビングに居ても駄目っぽいのね。」

僕が犬なら耳が垂れ下がっていることだろう。


紗奈は起き上がり、僕に手を差し出す。

「ん、お手。」

その手を取り立ち上がると、紗奈は僕を引っ張るように部屋へと戻る。

その耳は真っ赤だ。

僕は引っ張られながら苦笑する。


「、、、何、笑ってるのよ。

颯太が催促するから、仕方なくなんだからね?」

全くもってその通りなので、僕は大人しく降参する。


「紗奈が可愛いから仕方ない。」

「ラブコメって、、、。

やっぱり、いいわ、また今度話しましょ。」

そうして、部屋の前で口を重ねる。


もきゅもきゅ。

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