1年と118日目「検証してみようと思った事があるの」

「検証してみようと思った事があるの」


ベッドの上で僕に背中をもたれかかりながら、カクヨムを読んでいた紗奈が唐突にそう言った。


「どんな事?」

尋ねたが、紗奈は後ろに居る僕の方を見て、また首を戻す。

「……やめとく。

狼颯太が出てくるから」


「……そんな事なんだ」


だけど、気になるのか再度、紗奈は僕の方を向く。

今度はその隙を逃さず、紗奈の口に僕の口を重ねる。

「んっつ」

油断していたのか紗奈が小さくうめく。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。


一度離れてから、もう一度唇をちゅっと重ねる。

そうすると止まらなくなり。


もきゅもきゅもきゅもきゅ……。


「待って、待って、待って」

口を腕で拭いながら紗奈が僕を手で押さえる。


「いやいや、紗奈が振り返ったら、可愛くてもきゅもきゅしてしまうのは仕方ないよね?」

僕はにこやかに言い切る。


紗奈は心なしか赤くなり、僕の胸をぺしぺしと叩く。


「むー、もういい。

颯太はいつでも狼だ」

「そうだねぇ〜」

紗奈がいつも同じ部屋に居るのだから、狼以外にはなりようがない。


紗奈はもきゅもきゅして、先程の警戒心が抜けたのか、検証をするべく僕に指示を出す。


「私がこう〜コロンと仰向けになるから、颯太は軽〜く私の両手を押さえてくれる?」


なんだか分からないが、紗奈が仰向けになったので振り解ける程度の力で軽く紗奈の両手を押さえる。


そうすると、当然、紗奈が下になり僕を見つめてくる。


やばっ、可愛い。


「あ! もきゅもきゅは我慢ね」

自然と口を奪いに行っていた僕はピタリと止めざるを得なかった。


僕は紗奈に訴える。

「……ちょっと我慢キツいかなぁ〜?」


ちょっとではない、かなりキツい。

触れられる先にピンクの紗奈の唇という宝石があるのだ。


「我慢ねー。

あ……、ちょっと近付いていいよ」

段々と唇が近づく。


「そこでストップ!」

吐息が掛かるほど、どころか少し唇を伸ばすだけで紗奈のピンクの唇に触れることが出来る。


興奮が限界値を超えないように、意識して呼吸を深くする。


「……颯太の息が口の中に入ってくる」


言い方!

僕の頭は真っ白だ。

いいや、真っピンクだ!!!


「……そこから触れるだけのキスって、出来る?」


紗奈の声が甘く脳髄を貫く。

必死にお互いが啄むように唇を擦り合わせる。

限界はとっくに越えたことを感じた。


「紗奈、ごめん」

言うと同時に口を奪った。


「むぐっつ」

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。


互いの両手が絡み合い、ギュッと恋人繋ぎになる。


応えるように紗奈からももきゅもきゅを返してきた時点で、止まる余地などただの一片も残っていなかった。




………………。





それからしばし……。

ベッドで2人で転がったままで、紗奈の頭を優しく撫でながら尋ねた。


「結局、何を検証したかったんだ?」


紗奈は僕の片手の指に自分の指を絡ませるように弄りながら、んーと言いながら、こちらを見て言った。


「……両手を押さえた状態で、あんな風になったらどうなるのかな、と思って」


紗奈はなんの疑念も抱かない眼差しで僕にそう言った。


僕は紗奈を腕の中の抱き寄せ……、盛大にため息を吐いた。


「そりゃ……、ああなるよ……」

紗奈は反論するように僕を見上げる。


「でもラブコメだと……、ヘタレがどうとかで……」

「……ラブコメ後の僕らの関係で今更何を言おうかと」

紗奈は目を丸くした後、すぐに目をうろつかせて。


「……それもそうね」


紗奈、今更過ぎる……。

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