190日目「小説とは、この一杯のラーメンみたいなものよ。」
「小説とは、この一杯のラーメンみたいなものよ。」
紗奈と一緒に向かい合って、夜食の袋ラーメンを食べていると紗奈は箸で麺をつまみ上げ、唐突にそう言った。
ずるる〜っと麺を口に含みスープで流し込む。
とても太る食べ方だけど喉越しが良い、気がする。
おもむろに水をコクリと飲んで。
「どういう意味?」
「特に意味はないわ。
言ってみたかったの。」
紗奈もずるる〜っと麺をすする。
このすするというのは、日本人の特徴とかなんとか聞いたことがある。
最近はラーメン文化も世界中に広まり、海外でもすする人が増えて来たようだけど。
暫し無言で麺をすする。
残ったのは醤油ベースのとっても身体に悪い美味しいスープ。
何処かで美味しい物は身体に悪いと聞いたことがある。
不足している栄養素の食べ物は美味しく感じるとも聞いたことがあるので、美味しいかどうかにその辺りは特に関係がないのだろう。
「人生はこの残ったスープのようだわ。」
「どういう意味?」
「人生は味わい深くも、全てを求めると良い事はない。」
「深いような深くないような。」
「思い付きだもの。
気にしてはダメよ?」
紗奈はズズッと少しだけスープを飲み、流しに器を片付ける。
僕もスープを半分だけ飲み流しに片付ける。
そのまま2人でリビングのソファーに座る。
「夜のラーメンは美味しいけれど、食べ過ぎ注意よね。人生と同じね。」
紗奈はそう言う。
「そうだね、、、。
その言い方ハマってるの?」
「なんとなく。
小説でも特定の言い回しを使いたくなる時があるわ。
一時期、もきゅもきゅから抜け出せなくなったように。」
紗奈はコテンと僕の肩に頭を乗せてテレビを見る。
その頭を優しく撫でる。
「今は抜け出したみたいな言い方だね。」
「、、、もきゅもきゅは人生と同じだから。」
「もはや意味が分からないよ。」
「そういう日もあるということよ。」
よく分からないけれど、そういうことらしい。
どういうこと?
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