第33話「ちょっとでも書かないと書けなくなるわよね」

「ちょっとでも書かないと書けなくなるわよね」


ベッドの上で僕とキスを繰り返していた紗奈は唐突にそう言った。


「……この状況でそういうこと言う?」

甘い雰囲気もなにもあったものではない。


……それでも紗奈とのキスはどこか甘く感じるけど。


紗奈はふふっと柔らかく笑う。

「ごめんね?」


そう言って僕の唇を割って自分の舌をねじ込む。

その舌を絡めとるようにズリッと舌でこするように重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。


紗奈がとろんとした目で僕にしがみついて。


……。


…………。


「……って書くとなんだか大人な雰囲気じゃない?」

僕の隣でコロンと転がりながらスマホで小説を書いていた紗奈がそう言った。


小説というかもきゅもきゅ幼馴染を、だね……。


「大人というか……ちょっとソッチ系というか……」

「……ちょっと晒しすぎた気もしなくはないわ」


「ちょっとなんだ……?」

「おだまり!」

そう言って紗奈は口封じに優しく口を重ねてくる。


もきゅもきゅ。


「それはともかく書く時間がないけれど、最近書いていないから次第に書く能力が衰えてくる気もするのよねぇ」


「あれかな、勉強は1日遅れれば1週間、1週間遅れれば1ヶ月遅れるとか」

「そうね。

他には職人が3日休めば、人にわかるぐらい腕が落ちるとか。

小説も毎日書くことで腕を維持する効果もあるわ」


そういうものなのだろうか。


「中には長期でゆっくり書く人もいるからタイプによるでしょうけど。

基本は書けば書くほど腕が上がるものよ。

代わりに精神力が摩耗するけど」


なんと難しい。

とりあえずねぎらいも込めて紗奈の頭を撫でる。

すると紗奈はゴロゴロと声を出しながら僕に抱きつく。


しばしそうしていたけど、嬉しそうにしがみ付く紗奈のほっぺが柔らかそうだったので、その頬にキスをする。

「んー」


そんなふうな反応が僕の脳髄を刺激したので、たまらずに紗奈の口に口を重ねた。

「颯太ぁ……あっぐっ」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅちゅっ。

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