79日目「あ〜んをしてみましょう。」

「あ〜んをしてみましょう。」


日曜日に紗奈と一緒に買い物に行き、休憩でカフェに入る。

僕はコーヒー。

紗奈はケーキとカプチーノだ。


ケーキを前に紗奈が突然、そう言ったのだ。


「そう言えば、外でしたことなかったね?

外で、というのはなかなか、、、。」


紗奈もうんうんと頷く。


「そうなのよ。

イチャイチャの基本中の基本でありながら、私たちはちゃんとこの儀式を済ませておかなかったの。

これは由々しき事よ!!」

「うん、そもそも僕らはイチャイチャの求道者になったんだっけ?」


自然に一緒に居たら、勝手にイチャイチャしてしまっただけじゃないかな?


紗奈は自らのケーキのイチゴをフォークでぶっ刺す。


「とにかく!行くわよ!颯太。

伝説の、あ、あ〜んから。」


「うん、紗奈。恥ずかしいなら無理しなくて良いからね?

大体、部屋でもあ〜んは出来るでしょ?

部屋でなら、食べさし合いしたことあるでしょ?」


紗奈はもじもじしながら。


「だ、だって、部屋だとそのまま、颯太、口うつ、、、」

「うん、僕が悪かった。外でそれを言うのはやめよう。」


紗奈は動揺したまま、言葉を続ける。


「そ、そうね、水なんか生温くなるけど、不思議と颯太からだと気持ち悪くは、、、」

「紗奈ストップ、紗奈ストップ、悪かった。僕が悪かった。

ほ、ほら、あ〜んをするんだろ?

はい!」


僕は口を開けて、紗奈のあ〜んを待つ。


「そう?ふふふ、颯太もあ〜んがしたかったのね。

はい、あ〜ん。」


もっと過激な経験もあるが、いざ外であ〜んをされるとこれはこれで恥ずかしい。


僕は紗奈からフォークを奪い、今度は紗奈に向けて、あ〜んを。


「はい、紗奈。あ〜ん。」

紗奈は戸惑いつつ、口を開ける。

紗奈の口の中が見えて、僕は思わず生唾を飲んでしまう。


ぱくっと紗奈は僕からのケーキを口の中に。


「、、、外は外で恥ずかしいね。」

「そうだね。」

「これがラブコメの由緒正しい、イチャイチャなんだね。」

満足そうに紗奈は笑う。

そうだね、と僕は返事をしながら、紗奈にこいこいと手招き。

流石に外でキスしたりはしない。

我慢する。


、、、でも。

紗奈の耳元で。

「帰ったら、いつものあ〜んもさせて?」

紗奈は顔を真っ赤にして、頷いてくれた。


、、、もちろん、僕も真っ赤だったけど。

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