368日目「心が弱ると良くないわね」
「心が弱ると良くないわね」
僕らのベッドに僕が腰掛け、紗奈は寝転がり僕の腰にしがみ付きながら、スマホで何かを読んでいた。
そしていつも通り、唐突にそう言った。
ちなみにここぞとばかりに僕は紗奈の頭を撫でている。
感触はとっても良いけど、腕が疲れてくるのが難点だ。
「まあ、そうだね」
紗奈はスマホを置き、両腕を僕の腰に回してきた。
「こういう時は何を見ても心がささくれてしまうの」
「夜更かししてマンガを読んでたせいじゃないかな?」
寝不足なだけじゃないかと。
「そうとも言うわね。
でもそれだけじゃないの!
これよ!」
珍しく紗奈はスマホで、とある恋愛マンガを見せる。
「この話はね、長い間純愛のイチャイチャを展開しながら最終回直前、2人はケンカしてしまうの。
あ、勘違いしちゃダメよ?
別れたりはしないみたい。
で、も、ね!!
行為こそしなかったけれど女の方が浮気しちゃうの」
「浮気したんだ……、そりゃダメだね」
「私にとってはね、読んで見て」
しばし……。
紗奈の言う話のところまで進む。
「……これ、男の僕の方がクルね」
ここまでに至る長いイチャイチャはなんだったんだと思うぐらい、カップルの女の方が一方的にケンカを売って、彼氏を部屋から追い出す。
彼女、酒を飲んで間違えて、彼女を好きな別の男と1夜を過ごす。
ただし、その男が鋼の精神力で手を出さず。
後日、その男にデートに誘われる。
女、オーケーの返事。
何故だ!!!
デート終了間近、キスされそうになる。
女迷いつつも受け入れ体勢。
相手の男の方がそんなことしちゃダメだよとキスをせずに立ち去る。
「……ボクハ、コウイウ女ムリ」
ハイライトの無くなった目でスマホを投げつけ……ずに鋼の精神力で机に置く。
「そ、そう?
ま、まあ、これから多分、反省して彼氏が許してくれるパターンだと思うけど……」
珍しく僕より先にムキーとなっていた紗奈がクールダウンして、フォローらしきものをする。
「いいや、無理。
どんなに反省しようとここで本質が出てる。
この女の人、こういう風なパターンになったら今度こそ浮気するか、寝取られる。
だって、これカクヨムで何度も見てきた寝取りパターンと全く一緒じゃないか!!!
たまたまストーリーの都合で相手の男が我慢してくれただけで!
そうしなくても、ふとした時に自分の感情優先して別れを選ぶ典型的なパターンじゃないか!
見るんじゃなかった!!」
僕はベッドに倒れ込む。
「おうふ、見せてごめんね?」
ぽんぽんと僕の頭をさすり珍しく紗奈が僕を慰める。
ちょっと落ち着いたので半身を起こす。
興奮冷めやらぬ僕は言葉を続ける。
「でも、実際、男からしたらエグいよ?
20巻分ずっと純愛でイチャイチャしておいて、その辺りのフォローが行き届かない後半でこれって。
女の人はこういうのオーケー?
男に置き換えたら、なかなかのクズ男だけど……」
「あー、より女っぽい人はそうかも。
でも違う人はいっぱい居るよ?
私はまず颯太以外にデートを受け入れるってのは無理かなぁ」
価値観の一致を見た僕は紗奈が普段より輝いて見える。
愛し過ぎる……。
紗奈の手を逃さないとばかりにギュッと握る。
「僕は相手が紗奈で良かったと心の底から思う」
「そ、そう?
でも颯太も浮気するかも「しない!」」
「いや、するか「しない、断じてしない」」
浮気をするつもりのない人がさらにしないことを覚悟して努力して、ようやく浮気の魔の手から逃れられるのだ。
その覚悟なき者に未来なんてない!
「おうふ……、珍しく想像以上に颯太が興奮してしまった」
愕然とする紗奈の隙を狙い、頬や首筋にかけてキスをしまくる。
くすぐったそうに身を捩る紗奈があまりに可愛くて愛しくて仕方がない。
「分かった、分かったから、ストップ、ストーーーーープ、もぎゅ」
もきゅもきゅもきゅもきゅ……
無論、今日の僕は止まることは出来なかった。
「……頂きます」
「……しょうがないなぁ」
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