368日目その2「……見なおすんじゃなかった」

「……見なおすんじゃなかった」


僕らのベッドで2人で転がりながら、紗奈はスマホでもう一度あのマンガを見返してたらしい。


「……何故、また見るの?」

「……ホラー映画を見る感覚に似てるかも?

私の気のせいだったかなぁと確かめたくて。


……でも。

見なおすんじゃなかった」


どうやらその純愛(!?)恋愛マンガの中で女の方がキスされるのを覚悟していたらしく、直前にキスをされそうなのが分かりながら目を閉じていたとか。


……僕はもう見たくない。


「……しかも続き見たら、彼氏に黙ってやがる、この女」

「……なかったことにするんだ。

いやまあ、リアルだと言ったところで修羅場だけど、物語がそれで良いのだろうか」

「続きの話で言うのかもしれないけど。

なんだかなぁ……」


僕らは2人で無言になった。


そして紗奈は……泣いてしまった。

僕はポツリと紗奈に。

「……もう見ちゃダメだよ」


「うう……、一気読みで20巻分読んで、幸せな気分になって、完結まで読んだらまた幸せな気分で読み返そうと思ってたのに。

まさか、こんな最低な」


紗奈はさめざめと涙ながらに僕にしがみ付く。


……寝取り浮気は色んなところに潜んでいる。

しかも大人気マンガでもしれっと何事も無かったように。


「……おそらく今の世間一般では、心の浮気は浮気じゃないんだろうね」


紗奈は一生懸命首を横に振る。


「違うわ、違うわよ。

そんな修羅の世界じゃないはずよ」


「……とある天才が現代ドラマで寝取り作品を上げていたよ。

あんなものなのかもしれないね」


「……面白かったけど、あの作品は違うわよ」


そういえば紗奈と一緒に読んだね。


「……ほんと浮気のない純愛物が読みたいわ。

純愛タグ付いてて浮気とかハーレムとか、それ純愛じゃないから。

颯太!

癒し頂戴!」


「はいはい」


「はい、は一回!」


僕の袖を掴み、催促する様に紗奈は顔を寄せる。


僕は紗奈の口に自分の口を重ねる。


「んっぐ」


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。


ツイ〜っと糸が繋がったまま。


「……お代わり」

「ん」


もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……

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