第11話「うーん、言葉が出ないわ」

「うーん、言葉が出ないわ」


紗奈がベッドにゴロゴロ、スマホ片手にそう言いながらうなる。


「言葉が出ないとは?」


「降りて来ないと言いかえてもいいわ。

隙間の時間ができても書こうという気持ちにならないのよ。

疲れているからかしら?」


紗奈はそう言いながら僕の唇に自らの唇を重ねる。

ついばむように感触を楽しんだら、口を開けて僕の舌を迎えに来たので応えておいた。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


「少し元気になったわ」

「そりゃ良かった」


紗奈は軽くコロンと上を向き、足を軽く上げ下げ。

「やっぱり颯太とのもきゅもきゅは最高の回復剤ね」


「まあ、僕も紗奈とのもきゅもきゅで回復しているのは否定しない」

ゴロゴロと転がりながら、座る僕の膝に頭を乗せる。

そう膝枕である。


「えへへー」

……と紗奈が笑うので、隙ありとばかりに上から口を重ねておいた。


もきゅもきゅ。


「これじゃあ逃げられないね……」


なんてなめらかな唇をしっとりとさせて言うものだから、そうだね、と逃さぬように再度上から口を重ねて、互いの舌を存分に絡ませた。


もきゅもきゅもっきゅもっきゅもきゅもきゅ……。


……。


……。



最後にちゅっと唇を重ねて口を離し、優しく口を元を拭ってあげる。


「ねえ、颯太?

これちょっと問題ありありじゃない?

もきゅもきゅと表現変えてもやらしさが滲み出てない?

大丈夫?」


大丈夫か、大丈夫じゃないかで言えば、大丈夫ではないと思う。

封印した黒歴史を確実に積み重ねていっていると僕は断言することだろう。


「まあ、いいわ。

それはおいといて。

颯太、私は覚悟が決まったわ!」


まあいいらしい。

今更だもんな。


「覚悟ってなんの?」

「公爵の話を完結させる覚悟よ!」

僕は首を傾げる。


「途中で終わるってこと?」


ここで終わるとあの話はバッドエンドまっしぐら。

まあ、救いがあるかものメリーバッドエンドと言えなくもない。


「違うわよ。

書き切る覚悟よ」

「書き切る覚悟なかった?」


それは驚きだ。

紗奈は基本完結を目指すタイプと思っていたが。


「違うわよ。

いいかしら?

ネット小説は何度も言うけど作品を完結させることはリスクばかりなのよ。

その中で完結をさせるということはある種覚悟が必要なの。


書いている途中で応援の声も星もレビューもなくなり、それでも書き切ろうとするのは覚悟がいるの。


ある方面で見れば、よもやすると自らの作品にトドメを刺すとも言えるわ。


……それでも私は終わらせることにするの。

譲れないこの物語で生きる彼ら彼女らのためにも」


終わりは新たな始まりでもある。

紗奈はそのことを言っているのだ。


「ま、それでもあと10万字ぐらい書かないといけないからまだまだ苦難の道なんだけどね?

疲れもするし」


とりあえず今は休むわと言って、紗奈は自らの口を指差し、綺麗な舌をちろっと見せる。


その合図を受けて僕は紗奈の口に口を重ね、その舌に自分の舌を触れさせる。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。

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