23日目「幼馴染に彼女が!!」

「幼馴染に彼女が!!」


 さっきまではご機嫌に、僕のベッドの上で、自分の枕を頭に敷き僕の枕を抱えて、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突に悶え出した。


 僕は流石に、心配になり紗奈の方を向く。

「どうした?」

「ん!」


 紗奈は僕を手招き。

 僕はいつものように、椅子でカラカラ〜と動こうとしたら。


「ん!」

 紗奈はベッドの自分の隣を、ぽふぽふと叩く。


 僕は首を傾げながら、紗奈の隣に行く。

 紗奈は、逃さねぇぜ?と言うように僕の腰にしがみ付く。


「幼馴染に彼氏出来るやつの逆パターン!!俺、彼女出来た、って話を見たの!」


 そうかそうかと僕は頷く。

 ヨシヨシと頭を撫でる。


「なるほどね。幼馴染同士で想いを伝えてない訳だから、彼氏彼女ではないから、仕方ないことだよね。」


 プルプル震えながら、紗奈はしがみ付いたまま。

 また頭を撫でておいた。

「僕らは付き合っている訳だから、、。」

「ない!」

「え?」

「付き合ってない!」


 え、、、?

 今更?


「付き合って!」

 紗奈は良い返事をするまで離すものかと、腰にしがみ付いてくる。


 当然、僕は混乱中。


「僕らは恋人同士だよね?」

 紗奈は頷く。


「付き合ってる、よね?」

 紗奈は首を横に振る。


 僕は不思議空間に突入したのか、それともあべこべ世界に来てしまったのだろうか?


「颯太、好き。」

「うん、僕も紗奈が好きだよ?」

「私と付き合って。」

「うん?うん、付き合ってると思うけど、付き合うよ?」


 そこで紗奈はようやく顔を上げ、赤い顔でえへへ、と笑う。


 もちろん、僕は疑問符のまま。


「どういうこと?」

「付き合うって、いつから付き合ってることになると思う?」


 ん?哲学か何か?


「お互いに付き合おうと言い出したら、、、あ。」


 僕らは気持ちを伝え合った。

 関係も持った。

 恋し合っている仲、だから恋人同士ではある。


 では、付き合うとは?

 スマホでカタカタ。


 紗奈もそれを覗きながら見る。


 付き合う、決め手

 検索


 これは内容が違うな。


 付き合う、意味

 検索

「互いに行き来して親しい関係を保つ、、、。」


 紗奈と顔を見合わせる。

 今居る場所、家、僕の部屋で僕のベッド。

 紗奈、毎日一緒に居る。


 あれ?


 付き合うってなんだ?


「僕らは、、、付き合ってない?」

 僕の呟きに、紗奈は泣きそうになって、僕の腰にしがみ付く。


「違う、落ち着け紗奈。まず、ユー、僕と恋人、オーケー?」

 紗奈は涙目で頷き、頷く。

「、、、オーケー。」


「ユー、紗奈は僕と毎日ここに居るね?」

 コクン、と頷く。


 よし、一歩一歩確実に行こう。


「それはつまり、常に行き来しているとも言えるね?」

「してる、かな?」

 紗奈は、戸惑いつつも頷く。


「それなら、僕らは付き合っているとも言えるし、、、。」

「言えるし?」

「同棲、しているとも言える。」

「同居とは違うの?」


 紗奈は首を傾げる。


「僕も最近知ったのだけど、同居は家族や友人との時に表現されて、同棲は、、、恋人同士が共に住むことを指す、らしい。」


 ぱぁあと花が開くように紗奈は笑う。

 そして、嬉しそうに僕の腰にしがみ付く。


 どっちにしても、僕は腰にしがみ付かれるようです。

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