22日目「颯太。服貸して?」

颯太ふうた。服貸して?」


僕のベッドの上に座りながら、自分の枕を抱えた紗奈さなは唐突にそう言った。


僕はシャーペンをポトリと落とし、ギギギと身体を紗奈の方に向けた。


「な、なんで、、、?」


紗奈は小首を傾げる。


「着てみたいから?」

何で、疑問系?


僕はふらふらとしながら、タンスから白いパーカーを取り出す。


大丈夫、分かってる。

分かってこうしているんだ。


でも止められないんだ!

止められるわけないんだ!


パーカーを渡す。

それを紗奈はいそいそと着る。

僕はそれを息を飲んで見守る。


「どう?」

袖から半分ほどはみ出した手を見せる、ブカブカの僕の服を着た紗奈。


クッ、、、。

可愛すぎる、、、!


僕は絞り出すように問う。

「何故、それを、、、?小説には、見たことがないシーンだ。

、、、いや!?あるのか?」


僕が気付かなかっただけか!?

もちろん、紗奈が今、目の前でやっている破壊力には敵わないが。


「私も見たことない。

主人公の家でシャワー借りて主人公のジャージ着たりする話とかあったけど、その袖の可愛さって、あんまり表現しないよね?

何でだろ?と思って。

あと、颯太好きだよね?この格好。前に借りた時もずっと見てたし。」


何でだ!?

そういえば何でだ!?

それと見てたのバレてた!


疑問に思いつつ、僕は紗奈の隣に座り、抱き締める。


「は!?しまった。可愛いから抱き締めてしまうと、見えなくなる!?」


これでは、ブカブカの服袖の可愛さを表現出来ないではないか!?


「おー、颯太が壊れた。」

紗奈が嬉しそうだ。


ブカブカ服のまま、紗奈をヨシヨシと抱き締める。

うん、温かい。


「、、、多分、危険だからだ。」

「危険?」

「うん、可愛すぎて、これを我慢出来る男がいない。

、、、つまり、ラブコメ的、好きって言いなよ〜?ヘタレだから言えない!展開が成り立たない。


なんか、もういいかな?と思えてしまう。

紗奈、好きだよ。

可愛い、凄く可愛い。」


紗奈の耳まで赤くなるのが分かる。

体温も上がっているのが分かる。


「えへへ、ありがと。私も颯太が好きだよ。」


僕らは互いの目を見る。

紗奈は熱くなってしまったのか、目が潤んでいる。


自然と僕らは、唇を重ねる。


検証結果、彼女のブカブカ服の手のひら半分出しは、危険です。


小説にする時は、注意しましょう。


僕は心の中で、誰にともなく呟いた。

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