第18話「作品の後半になればなるほどやってくる、この恐怖の感覚はなにかしら?」
「作品の後半になればなるほどやってくる、この恐怖の感覚はなにかしら?」
紗奈はベッドの上で座りスマホを両手で持ちながらカクヨムを見ていたが、いつも通り唐突にそう言った。
「恐怖?」
「そう、恐怖。
その言葉が1番しっくりくるって今日気付いたの」
「今日気づいたんだ?
でも恐怖してたの?」
紗奈は神妙な顔で頷く。
「恐怖してたの。
理由はだいたい想像がつくわ。
この手で作品を終わらせてしまう恐怖、キャラクターの感情が入り混じり混沌となる恐怖、そして1番はこの作品を自分の望む形にまで昇華できるかどうかという恐怖」
「望む形に?」
「そう、望む形に。
小説に限らず、特に商売として発表するもの以外は自分が描きたいものを描くわ」
紗奈の言葉に僕は頷く。
商売となると書きたいものを描けるわけではないのも確かだ。
大人の都合で歪められて、なんでそうしたんだ、と疑いたくなるような変化をした作品もたくさんある。
「その反対にカクヨムでは作者は自由に……もちろん自分で選んで流行りとか自分の趣向ではない作品も書くことはあるけど、それでも自分の描きたいなにかはあるのよ。
それを心の中にある世界をちゃんと伝えることができるのか、なにより自分の描いたそれを表現できるのか。
作品を完成させるということはそれが問われるのよ。
なにより自分自身に。
だって自分にだけは嘘を付けないもの」
なるほど、である。
それは書いている人にしかわからない感覚と言えよう。
紗奈はなおも続ける。
「その自身の願いへの恐怖こそが作家の手を鈍らせる。
特にそこに作品としての終わりも付きまとうのなら、なおさら」
そこで紗奈はベッドの上ですくっと立ち上がる。
こけてしまわないか警戒する僕をよそに紗奈は拳を高く振り上げる。
「だからこそ、作品には読者の応援が必要なのである!
今こそ読もう!
カクヨムの民よ!
ジーク・カクヨム!」
「紗奈はガ◯ダムネタ好きだよねぇ」
「名言というのは魂がこもった作品にしか生まれないのよ。
ソウイウモノヲワタシハカキタイ」
そう言いつつ紗奈はパタリと倒れ込む。
大丈夫かなと顔を寄せると紗奈も顔をあげてこちらを見たので、いつも通り口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
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